――彼は、泣いていた。
ぎょっとすると、彼は涙を手の甲で拭いながら「ごめん」と笑った。
大きな手が私の頭を優しく撫でる。
私は思わず赤面してしまった。
そう言って笑いかけられる。
ドキッ、と心臓が鳴った。
……『ドキッ』!?
あ、絶対今変に思われた。最悪……。
がっくりとうなだれた時、ふと時間が気になった。スマホのロック画面で確認してみたら、そろそろ夕飯の買い物に行かなければならない時刻だった。
私は目をぱちくりさせて、隣に座る宏一の方を向いた。
4時半って、ちょうど私が死のうとした頃……。
ここで、話そうって……ことなんだろうか。
ニコッと笑って手を振ってくる宏一。
ぺこりと頭を下げ、私は公園を出た。
無意識に頬が緩んでいて、慌てて無表情を作った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。