「こっちで牢獄で過ごしたから、お父さんは、あんなことに…」
「そちらの世界でも、君のお父さんは死んでしまっているのだろう。どうなったのか、教えてくれないか。」
「…お父さんは、殺人事件の容疑者にされたの。殺人現場の近くにたまたまお父さんが1人でいて…。しかも、運の悪いことに、お酒を飲んでいたから、その時の記憶が曖昧で…警察は、お酒を飲んでいたせいで口論にでもなって、被害者を殺したと公表した。
お父さんは、裁判で必死に戦った。でも、何も、報われなかった…」
「辛かっただろう。」
私は首を横に振った。
「私は、お父さんを信じなかったの。無実を主張していたお父さんを。お父さんが容疑者にらされてから、私は学校で虐められ始めた。家に嫌がらせもされて、もううんざりしていて、お父さんのことをすごく、恨んだ。」
「でも、君は、こうして今、お父さんの事を知ろうと奮闘しているじゃないか。罪悪感だけじゃない、本当はお父さんを信じていたんじゃないか。じゃなきゃ、『一番大切なこと』がお父さんなわけないだろう。」
私は泣いた。声をあげて泣いた。こんなに泣いたの、何年ぶりだろう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。