何度彼と同じベッドで眠っても、何にも“そういうこと”がないということは 私に魅力がないということなのだろうか。
それともただ 大事にされているだけなのか。
…正直 二年半も付き合っておきながら キスより先に進めないというのもどうかと思うのだが。
別に今の生活に不満があるという訳では無い。
彼の待つ家に帰れるというだけで、心は満たされていた。
一方で、体が満たされることはないのだけれど。
もちろん、私から誘ったことも一度や二度はある。
しかし、その度に“無理しなくていいよ” “俺は待てるから”なんて言葉で丸め込まれてしまうのだった。
暖かい布団の中で、そっと手を繋ぎ 小さな声で名前を呼ぶ。
反応がないところを見ると、どうやらもう眠ってしまったらしい。
“彼も疲れているんだから仕方ない”
そんな思いと。
“少しくらい触れてくれてもいいのに”
そんな思いが、心の中で揺れる。
唇の端にそっと口づけをし、モヤモヤした感情を抑え込むように 強く瞼を閉じた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。