第8話

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2018/01/06 14:04
ふわりとシャンプーが香る長い髪。
優しさを湛えた目元は 五年前も変わらない。

それから、怒ると無口になるところも。
…なぁ、悪かったって

ベッドの中で叩かれた左頬は未だジンジンと痛んでいる。

悪ふざけが過ぎたのだろう。
涙を浮かべた彼女を目にした時は、さすがに焦りを覚えた。

しかし、時すでに遅し。

シーツに縫い付けた両手を解放するや否や、彼女の右手が飛んできたのだ。
あなた?

キッチンに立った彼女は 忙しなく動き回り、俺のことはまるで空気かのように扱っている。

でも カウンターに置かれた2枚のプレートとコーヒーカップが、俺を甘やかす。
…お前のそういうとこ、好きだよ

そう言って背後から抱きしめれば、耳を赤くして聞こえないフリをするのだから 堪らない。


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