第16話

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2018/01/07 04:11
食事を終えた後、俺達は近所のスーパーに寄って 自宅へ向かった。

三年後にはもうこのアパートを離れることになるのだが、それはお楽しみってことにしておこう。

…あなた

部屋に着くやいなや、俺は彼女の体を抱きしめた。
あなた

っ…ちょっと……

彼女は困惑したように 俺の胸を押すが…
少しだけ…お願い
甘えた声を出せば、すぐに抵抗する手の感触は消えていく。
五年前の俺は 滅多にこういう愛情表現をしなかったような気がする。

もちろんしたくなかった訳ではない。
“先”に進みたい気持ちは山々だったが、嫌われるのが怖くて なかなか進めずにいたのだ。


ただ 彼女を大切にするあまり、知らぬ間に傷つけてしまっていたのだろう。

あなた

五年前も、このくらい積極的でいてくれたらいいのに…



そう彼女が本音を口にした時。



ふっと何かが変わったような気がした。


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