食事を終えた後、俺達は近所のスーパーに寄って 自宅へ向かった。
三年後にはもうこのアパートを離れることになるのだが、それはお楽しみってことにしておこう。
部屋に着くやいなや、俺は彼女の体を抱きしめた。
彼女は困惑したように 俺の胸を押すが…
甘えた声を出せば、すぐに抵抗する手の感触は消えていく。
五年前の俺は 滅多にこういう愛情表現をしなかったような気がする。
もちろんしたくなかった訳ではない。
“先”に進みたい気持ちは山々だったが、嫌われるのが怖くて なかなか進めずにいたのだ。
ただ 彼女を大切にするあまり、知らぬ間に傷つけてしまっていたのだろう。
そう彼女が本音を口にした時。
ふっと何かが変わったような気がした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。