第20話

#7 高校生のカノジョと、
707
2018/01/07 12:51
人とはどこか違った雰囲気のある彼女と出会ったのは、俺達がまだ高校生だった時のことだ。
花、好きなの?

一人花壇の植物に水をやる彼女を見かけたのは、日暮れ時のことだった。

同じクラスではあったものの 声をかけたのは初めてで、不覚にも声が震えてしまった。
あなた

あ…うん


夕日に透ける髪は柔らかく、風はシャンプーの香りを運ぶ。
いつも水遣りしてるの?
あなた

雨じゃなければ…だけど


ひぐらしの鳴く声が 遠くから聞こえてくる。

ホースを持った彼女は、話をしている間もその手を止めることは無い。
そっか

そう言うと 沈黙が俺達の間に流れた。

ずっと話したいと思っていたのに、不思議なほど 言葉が出てこない。
恋をするということはこういうことだったのか。

今思えば、この時初めて“人を好きになる”ことがどういうことかを知った気がする。


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