熱く甘い 彼女の吐息。
触れれば二人の体温が混ざり溶け合う。
一瞬 強張った体。
柔く 脆い彼女の中。
あなたは眉間にしわを寄せながら一言。
__“愛してる”と。
グラスに注いだ水が、ゆらりと揺れる。
彼女はベッドに横になったまま “ありがとう”と言って 手を伸ばした。
そう尋ねると、彼女は気だるそうに俺を見上げ 二三度頷く。
汗で額に貼り付いた髪をそっと取り、火照った頬に触れた。
彼女は優しい笑みを零し、サイドテーブルにグラスを置いた。
こちらへ伸ばされた白い腕に導かれるようにして 布団へ潜り込めば、恋人の体温がじんわりと伝わってくる。
あなたは布団で口元を隠しながら、小さな声でそう呟き 瞼をゆっくり落としていった。
…目には見えない幸せが、そこにはあった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!