第3話

事故
52
2017/12/28 01:30
普段も登下校は一緒だったが、今日は特別。
何故なら、前から行きたかったケーキ屋さんに一緒に行く約束をしていたから。
だから、朝からそわそわしていた。
ケーキが食べられるのも嬉しいが、何より、冬弥を独り占めできる。
それが嬉しかった。

「冬弥って、甘いもの好きだっけ?」

「別に、嫌いでも、好きでもない。」

「今から行くお店ね、東京にはあるんだけど、地方にはここにしかお店ないんだよ!すっごく美味しいって夏奈が言ってた!」

私は、はしゃいでいた。
冬弥と話せている嬉しさと、春の日差しの心地良さとで、浮かれていた。
私が行けなかった。私がーー。

「それでね、」

冬弥の前を後ろ向きに歩いていた。
冬弥に危ないと言われながらも、大丈夫だよ、と言いながら。
信号が赤なのも気づかず、車の音にも気付かず。

「晴っ!!」

不意に体が宙に浮いた。
誰かに、歩道へ引き寄せられた。
その瞬間、私の視界は真っ赤に染まった。
何も、分からなかった。
ただ、分かったことは、目の前で倒れているのは、私の大切な人ーー冬弥だってことだけだ。
誰かの悲鳴が私の頭に響いた。
誰かの泣き声が、あたりに響いた。
冬弥の顔が、優しい声が、私の心に響いた。
余りにも煩かったので、耳を塞いだが、収まらなかった。
なぜなら、私の声だったから。

「冬弥ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

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