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第6話

5memory
57
2018/01/02 06:57
トモ
ねーねー、もよこってまだ何も思い出してない?
ある日、昼ごはんをいつものメンバーで食べてるとトモちゃんがそう聞いてきた。
もよこ
う、うんまだ…。
航太
まあ全然ゆっくりでいいけどな!
こんなもよこも新鮮だし!
「こんなもよこ」って何なの…?
わたしって一体どんなひとだったの?


いつもそんな疑問を抱くけど、何故か聞けない。
もよこ
わたし、トイレ行くから先戻っとくね!
そう言って、二人に背を向け足早に去った。
トモ
私、今すっごい複雑な気持ちなんだ。もよこに思い出してほしいような、思い出してほしくないような。
航太
俺もだよ。
そういや例の犯人捕まったらしい。
トモ
マジで!?
良かった…!もよこが思い出すのも時間の問題だね。
航太
思い出して塞ぎこまなかったらいいけど…
二人が深刻な顔でそんな会話をしている一方、もよこは廊下を歩いていた。
もよこ
はあ…、思い出さなきゃ申し訳ないよ…。
航太君たちは多分、元のわたしに戻ってほしいのだろう。
頭を抱えていると、後ろから声をかけられた。
麗美
ねぇそこの貴方。
振り返ると、そこには長い黒髪に長いまつげ、大きな瞳をもつ美女がいた。
もよこ
わたし…?
美人の威圧を感じながらも答えた。
麗美
あなた航太と付き合ってるんだってね?
もよこ
はい、でもわたし記憶を失っていて…
麗美
じゃあさ付き合ってないって捉えていいわよね?
もよこ
え?でも…
麗美
だってあなたは今航太を好きじゃないんでしょう?
大きな目の中には怯えた表情のわたしがいる。

麗美
そんな気持ちで付き合ってるってさ、航太と航太を好きな人が可哀想じゃない?
どんどん彼女の声が荒ぶっていく。

また正論なので、何も返せなかった。
麗美
何であんたなのよ…いっつもいっつもアタシの方が航太を好きなのに!!!!!
下を向いていると、ぐいっと顔を上げられた。
麗美
目をそらすな!ちゃんとアタシと向き合いな!
絶対あんたなんかに航太は渡さない!
威厳のある声にビクッとなる。
もよこ
(怖い!!!)
その時わたしとその美女の間にビュンッと何か飛んできた。
もよこ
…??
麗美
んん?消しゴム?
消しゴムがわたしたちの足下に落ちた。
トモ
その辺で勘弁してやって麗美
トモちゃんがわたしたちの前に立っていた。
麗美
トモが言うならこの辺にしといてあげるわよ!
フンッと鼻をならして、タタッと去っていった。
もよこ
あの…今のは?
トモ
今の子は麗美。私の友達なんだ!根はいいやつなんだけど、航太のことが大好きだからああなっちゃうだけ。
もよこ
トモ
大丈夫!本気で嫌がることはしないよ。
もよこ
う、うん…。
わたしはあの人と仲良くなれるのだろうかー

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