第5話

後悔
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2018/02/06 15:23
あなた

はぁっはあっ…

私は立ち止まった。とうとう心臓が悲鳴をあげたのだ。
私の心は、いつまでもいつまでも自分のことを責め続けていた。
どうして遅れたんだ。もう少し早く着いていれば、ヒロは助かったかもしれないのに。
あなた

うっ、うぁぁぁぁん…

涙は止まらなかった。もうすぐ身体中の水分が全部抜けて涙は止まるんじゃないかと本気で思ったが、全く止まる気配はなかった。
私は、言うことを聞かない足を引きずるようにしてとぼとぼと歩き始めた。
その時だった。
曲がり角から突然猛スピードで車が飛び出してきた。車の運転手は、お酒でも飲んで酔っているのか私に気づいていないようだった。
私との距離は、僅か5メートル。
あなた

(あ、車だ)

私の心はもう疲れ果てていて、逃げようとすら思わなかった。
あなた

(あ、私このまま死ぬのかな。車に当たられたら痛いよね。まあいっか、このまま死ねば、ヒロに会える…)

そんなことすら考えていた。
車との距離1メートル。
車との距離50センチ。
ここでやっと私の脳は危険だと察知した。しかし、もう逃げられない。
僅か3秒ほどの時間で私はいろいろなことを思い出していた。
頭の中に浮かぶのは、ヒロとの思い出ばかりだった。
あなた

(あ、そういえば私、ヒロに好きって言ってない。)

「好きです。付き合って。」そう言われた昨日。私は恥ずかしくて、
「はい。」としか言えなかった。
あなた

(せめて、一度でいいから好きって伝えたかったな…)

ドンッ!

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