あれから3日後。
ヒロのお母さんは、一命はとりとめたものの、まだ意識が回復していないらしい。
私はヒロの面会に来ていた。
この間は、あの後母が来てくれて、一緒に面会時間ギリギリまでいたが、結局ヒロが起きることはなかった。
ヒロは無数のコードにつながれていて、口には酸素マスクをしていた。
ヒロの手を握りながら、ぽろぽろと涙をこぼした。
すると…
ぴくっ
ヒロの指が一瞬だが、確かに動いた。
ヒロはうっすらと目を開けた。
私は嬉しくて、さらに涙が出て来た。
ヒロは苦しそうではあったが、ひとつひとつ、確かめるように話した。
ピコンっピコンっピコンっピコンっ
突然、ヒロにつながっている、心電図のようなものから、音が鳴り始めた。
素人の私にもわかる、明らかに危険な状態を知らせるような音だった。
ヒロは、目を閉じ、苦しそうな表情だった。
私はすぐに、隣にあったナースコールのボタンを押した。
程なくして、お医者さんと、看護師さんが駆けつけて来た。
そう言われて、私は病室の入り口のところまで下がった。
ヒロの体には、次々と見たこともない機械が取り付けられていく。
そう願うしかなかった。
しかし…
私は、お医者さんの言った言葉の意味がわからなかった。
そう言うと、お医者さんと看護師さんは静かに病室を出ていった。
だんだんと、状況に頭が追いついて来た。
ヒロのもとに駆け寄る。
死んだなんて、信じられないほど、まだヒロはあたたかかった。
私はその場で泣き崩れた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!