ー旬の好きな人って誰なんだろう…
授業中もずっとそのことばかり考えていた。
すると目の前がフッと暗くなった。
上を見上げると、コワモテをした先生がわたしの前で仁王立ちをしていた。
先生の話をまともに聞いていなかったため、その問題を解けれる自信がなかった。
黒板とにらめっこして3分くらいたつが、まだ解けない。
みんなの視線が背中越しに伝わってきた。
困っていたとき、後ろから声がした。
旬はまっすぐわたしの目を見つめてきた。
わたしはこくりと頷き、式をみつめる。
冷静になると、その問題もだんだん解ってきた。
安堵から顔が綻び、旬のほうを向いて言った。
旬はちょっと目を見開き、目をそらした。
駄目だ…また胸が締め付けられる。
ー無意識にそう呟いていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!