学校の帰り道。
"銀ちゃん"こと担任の坂田銀八。
二人が居る交差点の向かいに彼が居た。
瑠璃の声に顔を上げる銀八。
そして、銀八の元へ向かおうとする瑠璃。
横断歩道の信号は、青に変わったばかりだった。
しかし─────
一台の車が信号無視して瑠璃の元へ突っ込む。
それを認識した和人はすぐさま飛び出していた。
瑠璃と銀八は気付いていない。
目の前には瑠璃の背中。
車は急ブレーキをかけるが間に合わないだろう。
和人は思いっきり瑠璃の背中を押した。
瑠璃はバランスを崩し倒れ込むが、
銀八が受け止めた。
一瞬、銀八と目が合った和人は微笑む。
ドンッ!!
銀八に受け止められ腕の中にいた瑠璃。
振り返った彼女が見たものは
血だらけで倒れている幼なじみの姿。
倒れている和人に駆け寄る瑠璃。
抱き起こすと、微かに瞳を開いた。
瑠璃の瞳から幾度となく零れ落ちる涙。
その雫が和人の頬を濡らす。
どうにか手を持ち上げ瑠璃の涙を拭う。
そして、頬へと添えて。
瑠璃と目が合う。
綺麗な青い瞳だな、とつくづく思う。
頬を少し赤らめる瑠璃。
本当に可愛い奴だなと思いながら顔を近付ける。
ゆっくり瞳を閉じる瑠璃。
それは彼女にとってのOKサイン。
和人と瑠璃の唇が重なり合う。
二人の唇が離れる。
和人は、瑠璃の腕の中で息を引き取った。
穏やかな笑みを浮かべて。
瑠璃と銀八。
二人の呟きは、風に乗って消えていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。