救急車の中で一緒に乗った先輩から聞いた話では大我先輩は心臓に病を抱えていて、元々あまり激しく部活をしてはいけない人だったらしい。
でも、どうしても野球がしたくていろんな人の反対を押し切り野球部へ入部した。
でも、今までの3年間で1回も倒れたことは無かった。それはチームメイトに心配をかけたくなかったから。心臓のことも副キャプテンの一緒に救急車にのった先輩と監督にしか話していなかった。
病院につくと大我先輩は急いで運ばれて行った。そのあと、病院と学校はあまり離れていないため、歩いて学校に戻ると命に別状はないと連絡は入った。安心はしたものの、大我先輩は心臓の状態が優れず入院するため最後の大会にでらないことも後々連絡が入った。
数日後の休日練の終わりに大我先輩が入院した病室へ1人でお見舞いしに行くと、思っていた以上に衰弱して、ベットに寝そべっている大我先輩がいた。
声をかけるとゆっくりながらこちらを見るなりすぐに反対側を向いてふとんをかぶった
先輩は布団の中でうずくまった
大我先輩は布団から顔をだし、こちらを見つめた
また先輩は布団を被り、うずくまった
私はりんごを食べやすい大きさに切ったものが入っているタッパをテーブルの上に置いた
そう言うなり私は病室を飛び出た。先輩は私を呼び止めようとしたが、病室へは戻らなかった。
きっと先輩は学校にまた来てタッパを返しに来てくれると信じていた。
でも、それ以来先輩の顔を見ることはなかった。その後、卒業式にも来ることが出来ず、私も卒業した今では、先輩が生きているか、死んでいるかもわからなくなってしまった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!