私の緊張を察したのか、大我先輩は笑いながら話始めた。
全く笑えない。また出てきそうな涙をどうにか抑えた。
予想外の言葉に変な声が出てしまった。
目を見開きながら先輩を見ると、どうにも冗談を言っているようにみえなかった。
恥ずかしそうに後頭部を抑えながら先輩はぼそぼそと言った。
ずるいと思った。そんな状況で断れるわけないし、私的には断る理由すらない。
私の言葉に安心したのか、先輩はにっこりと笑った。
ピザが到着すると二人で絶品と呼ぶにふさわしいピザを食べた。
食べ終わると先輩は両親に電話をしたが、
スピーカーでもないのにハッキリ怒声が聞こえてきた。
私は先輩が野球部にいた頃の試合前にやっていたように
背中に手でハートを書いてその中心を平手で叩いた。
先輩は拳を握り、自分の胸にあてるとにっこり笑った。
これも選手だった時にやっていたことだ。
キャプテンだった大我先輩はこうすれば落ち着く!!と選手全員にやらせていた。
決まってその日は試合に勝っていたから凄いのだ。
懐かしい姿を目に焼き付けると先輩は「じゃあ」といって私の部屋を出ていった。
出て行った瞬間、不安が胸に広がった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。