第9話

違和感 。
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2018/01/06 04:30
えっと…… 2人って仲良かったっけ?



いえ、全く。


答えは出ているものの口に出す気はない。

きっと先輩も答えないはずだ。


私と先輩の顔を交互に見る七瀬。

3人の間に沈黙が流れる。







その沈黙を破ったのは七瀬だった。
神崎、ほっぺた赤い??どうしたの ??
あなた

あ、いや …別に。

「先輩に叩かれました」なんて言えるわけがない。
あ、それ… 俺の
先輩の持つパスケースを指差していった。

咄嗟に背中に手を回してそれを隠す先輩は気まずそうに俯いた。



それを見て何かを察したであろう七瀬が聞きづらそうに…
先輩、もしかして神崎のこと叩きました… ??
先輩が小さく頷く。
間違ってたら悪いんですけど、俺の鞄からそれ、取ったのも先輩… ??
間違ってたら、なんて前置きしてるけどきっと七瀬は確信して聞いてる。

なんとなくそんな感じがした。
また、小さく頷く先輩。

本人に言われればあっさり認めるのかよ。

そう思ったけど言わないでおこう。

今は2人時間。私が口をはさむべきじゃない。
返してもらえますか?
困ったような笑みをうかべた七瀬が手を出せば

その上にパスケースが置かれる。

すぐに中身を確認すれば
…よかった。

と、安堵の声をもらす。
ぎゅっとパスケースを両手で握りしめる七瀬。

幼い子どものようで少し可愛い。
先輩
ごめ、ん…っ
すぐに消えてしまいそうなくらい小さな声。

彼女の頬には涙がつたっていた。



いや、なんでそっちが泣くの?

泣きたいのはほっぺた叩かれた私とパスケース取られた七瀬でしょ。

さすがに我慢できない。
あなた

なんで

なんで先輩が泣くんですか?
私の声にかぶさるように七瀬が聞いた。
泣きたいのはこっちですよ。
俺はともかく、顔を叩くのって人としてどうなんですか。
何があったかわかんないけど、きっとこいつが余計なことでも言ったんでしょ?こいつ昔からそうだから。
はぁ、とため息をついてから言った言葉。 

その言葉に少し違和感 。


違和感の原因は





«昔から»




きっと……いや、絶対そこだ。



先輩
ごめんなさい…っ 。 恋くんが大事にしてるのわかってたっ…けど…明日返せばいいと思って…っ
俺はもういいから神崎に謝って?
うん。七瀬なら許すと思ってた。
先輩
ごめんね…あなたちゃん 。
痛かったでしょ… ?
あなた

いや、私は全然 大丈夫です

本当は痛かったけど言わない。

これ以上 謝ってほしいわけでもないし 私にも非はあったから。
先輩
本当にごめんね。
そう言ってお辞儀をすれば踵を返し、下駄箱を通り先輩は帰っていった。

先程まで一緒にいた友達はいつの間にか帰ってしまったらしい。

一人で歩く後ろ姿がなんだか少し可哀想に見えてくる。

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