数分前に出会った【星哉】とかいう男。そいつに急に願いを聞いてほしいと言われ、今私はここにいる。
「ねぇ、どういうこと?」
「なにが?」
「なにがって、なんで私があんたと一緒に海に来ないといけないの?」
「屋上の展望台よりあの展望台の方が高いだろ?」
星哉は100m先の展望台を指さして言った。
「高いけど…1人で来ればいいじゃん」
「文句言うなよ、めんどくさい奴だな」
「や、めんどくさいのあんたでしょ」
「どうだか。てか、星哉ってよんでよ」
「はいはい、星哉はめんどくさいね」
「酷いこと言うなー」
私たちは展望台に向かって歩きながらそんな会話をしていた。
展望台を登って空を見上げると、屋上で見ていた空とは少し違って見えた。
「なぁ」 星哉が呟いた。
「ん?」
「輝羅は快晴の日が好きか?」
「どうしたの急に。んー、嫌いではないかな。星哉はどうなの?」
「俺は快晴の日が1番好きだな」
星哉は空を見上げながら答えた。こういう時に星哉はよく、どこか遠くを見ている。
「ねぇ、星哉っていつもなに見てるの?」
「は?」 不思議な顔で私を見つめる。
「星哉っていつもどこか遠くを見てる」
「さあな、そのうち分かるんじゃないか」
星哉は私の質問に答えずにそれだけ言った。
「そのうち分かる。かぁー」
「おう」
その後しばらく空を見上げてから今日は、日が落ちてしまう前に2人とも家に帰った。
空を見上げていた時間は長いようで短ったのだろう。
海にある展望台に登って一緒に空を見上げる、それが星哉のお願いだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。