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第4話

約束の場所.
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2017/12/31 09:05
星哉の電話番号とメアドを登録して何時間たっただろう。登録したのはいいものの、メールの文字を打っては消してを繰り返していた。迷いに迷った末に『輝羅だよ』という一言だけを打って、送信ボタンを押した。
「はぁ。」
ため息をついて目を瞑った。それからの事はよく覚えていない。

ー ピピピピピーッ ー
目覚ましの音で目を覚ました。外は薄暗く、山の頂上からは日が昇りはじめる頃だった。
「あぁ、朝か。学校…」 ハッとした。
そう言えば今日は土曜日だった。部活無所属の私は学校に行く理由もない。
もう1度布団に潜ろうとしたときだった ー ピロン ー 携帯の着信音がなる。誰からのものかは分かったようなものであった。
『星哉です 登録さんきゅー』
返信する言葉も見当たらなく、携帯を机に置いた時だった、ちょうど2回目の着信音がなった。次はなんだとため息をつきながら携帯を手に取る。
『そういえば、今日ひま?』
特に忙しい理由もない私は『暇だけど』と一言打って返信をした。

メールのやり取りから1時間後、私はまたあの展望台にいた。そこで空を見上げていると、いつもの調子で星哉がやってきた。
「すまん、遅くなった」
一応急いでいたらしい。
「いいよ別に待ってないし」
「そっか」
1つ不思議なことに気づいた、確か1・2年は部活強制所属のはずだ。
「星哉部活は?」
「俺?部活やってないよ」
「だってうちの学校…」
言いかけたところで、私の言葉を遮るように星
哉が話し始めた。
「俺まえに、快晴が1番好きって言っただろ?なんでだと思う?」
「知るわけないじゃん」
「なんだよ、少しは考えろよ」 呆れた顔をして星哉は続ける「ほら、快晴の日って夜に星が1番綺麗にみえるだろ?」
星哉の口調といい、思っていた性格とはかけ離れた事を言ったから少しびっくりした。
「それでさ、今日の夜この展望台にまた来てよ」
空はいつにも増して今日も快晴だ。ここからの夜空は見た事がなかったから少し興味があった。
「いいよ」 私は答える。
「じゃあまた夜」
「うん、また」
この時からこの展望台が私と星哉の "約束の場所" になった。

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夜、約束の時間の5分前に展望台についたが、そこにはすでに星哉が座っていた。
「お、きたか。ほら見てみろよ」
そう言われて私は展望台からの夜空を見上げる。綺麗、というより宇宙にいるような感覚と言ったほうが正しいかもしれない。
「なんかすごいね、宇宙にいるみたい」
「だろ?」
「今日までこの夜空を見れなかったなんて損してたな」
確かに夜空は綺麗だけど、星哉の言い方にすこしイラッとした。
「そんな得意げに言って、星哉の私有物みたい」
「なんだそれ」
「あ、あの星、星哉みたい」
私は一等星の明るい星を指さして言った。その隣には今にも消えてしまいそうな、儚くも一生懸命に輝く星があった。
「俺あんなに明るいか?」
「元気すぎて困るよ、まったく」
「そうか」
そう言って私と星哉は笑った。

その時の星哉の笑顔を見た。その笑顔は本当に、指さした一等星の星のようだった。

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