第5話
手紙
目を開けると、ベッドの上だった。
まだ辺りは薄暗い。
携帯で日付を確認すると2092年5月15日となっていた。
2092-戻って、これた。
あの後どうなったのだろう。
がばっと起きると、ベッドの木枠になにか見覚えのないものがあることに気付く。
なんだろうと思い手に取るとそれは1枚の紙だった。
-玲依へ。
あの時は楽しかったね。
新しく出来たショッピングモールで大はしゃぎして。
ゲームセンターでたくさんの景品を取って。
バイキングで周りのお客さんが少し引くぐらいの量を2人で食べて。
雑貨店でお揃いのキーホルダーを買って。
玲依はそれを全部スマホで撮影してくれてたんだよね。
ありがとう。
あたしはあの時の言葉を忘れないで、諦めずに生きた。
玲依はあたしを何度も支えてくれた。
負けそうになったあたしを何度も、何度も…。
結果、病気には勝てなかったけれど、あたしの人生は短いながらも最高に楽しかった。
それは、全部玲依のおかげ。
玲依が友達で良かった。
幼稚園の頃から友達になってくれた玲依と居られた。
あたしは幸せ者だね。ありがとう。
あたしもまた、玲依に会いたい。
玲依とまた遊びたい。友達になりたい。
だから、また今度会える日を楽しみにしておくよ。
見慣れた瑠夏の字で。
とても、几帳面な字で。
その内容は綴られていた。
今度は、泣かなかった。
泣き顔なんて、瑠夏に見せられないからと強がった。
あたしもまた、瑠夏と友達になりたい。
瑠夏と会いたい。たくさん話したい。
早朝、窓を開け瑠夏に届くようにと願いながら言う。
1人のユーザーが応援しています
作者を応援しましょう
シェア&お気に入りしよう!
この作品をお気に入りに追加して、更新通知を受け取ろう!
ノンジャンルの作品もっと見る
公式作品もっと見る
きみが俺を忘れても、何度でも「好き」って伝えるから。
高校2年生の冬。 記憶を失った私の前に現れた クラスの人気者──悠貴くん。 「忘れないで。俺にはきみが必要だってこと」 いつも優しい言葉をかけてくれて、 つらいときは手を繋いでくれる。 どうして、私に踏み込んでくるの? これは、私の失くした宝物を見つけるまでの物語──。 ※夢機能つき作品 イラスト/nira.
15,548383662ノクターナル・ラヴァーズ 双子吸血鬼と薔薇の花嫁
「その薔薇の香りの血を、俺たちに捧げるんだ。お嬢」 哀原鞠衣は、薔薇ノ苑学園で生徒たちの憧れを一身に集める生徒会副会長。 しかし、家での彼女は同居する双子の吸血鬼・トーマとノアに隷属させられ、意のままに支配されていた。 「姫に断る権利はないんだよ。キミは、僕たちの花嫁なんだから」 逃れられない吸血の誘惑、贄としてだけ愛される花嫁――…… 執着と倒錯の学園×吸血パラノーマル・ロマンス!
11,454408408忘却の皇子と迷いの花嫁
ヴァールハイト帝国では、十七歳を迎えた第二皇子の花嫁募集が始まった。ニーナは、その国に暮らす十六歳の平民女性。国の中が花嫁募集で賑わう中、平民の自分には関係のないことだと思いながら過ごしていた。そんなある日、ニーナの家に、傷だらけで疲弊した男性が訪ねてくる。彼は記憶を失ってしまったと言う。不憫に思ったニーナは、しばらく彼をかくまうことを決めるのだが……。 イラスト/nira.
9,525122200