何もない 持ってない
出来ることがない
なんて無能
私にも何かあるのだろうか?
何でも卒なくこなせる背中を傍で見てきた
日本に 世界に 羽ばたける程ではなく
特に秀でたものがあるわけでもなく
小さい範囲でひっそりと
ある意味 器用貧乏で
ハズレくじ引いていたけれども
それでも存在が大きくて 眩しくて
自分には追いかける力もないと
遠ざかる背中を見つめてるだけ
そんな中で唯一勝てるもの
自分にも出来ることがあった
周りの期待も僅かながら感じられた
才能なんてない
努力しても克服できない
プレッシャーで潰されそうになった
自分の限界と過度な期待と厳しい特訓に
嫌気が差しても 心の支えでもあった
好きな気持ちは変わらないから
成果挙げられなくても
将来に繋げられなくても
続けたかったのに
幼子にはどうにも出来ない事情だってある
大きくなっても出来るとは限らない
空白の時間が感覚を鈍らせるどこか
もう取り戻せないほど
跡形もなく消えてしまった
今の私からは想像出来ない
夢物語 妄想 狂言にしか思われない
写真や置物が真実を物語っても
実感すら沸かない
昔の自分にすら勝てない
もう何も些細な武器すら持ってない
本当にもう何もなくなった
何もない 持ってない
何も出来やしない
なんて無力
私でも見つかるだろうか?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。