予想していた衝撃はいつまでたってもこない。
さすがに待ちくだびれて目を開けた。
そう訊いてきたので、手を顔にあててみた。
確かに口角が上がっている。
こんな状況で笑う自分はどうかしてる。
それがおかしくて、肩を揺らした。
すると、青年は顔をしかめた。
そして、「やっぱりへんだよ。医師に診察してもらったほうがいいね」と言って刀を鞘におさめた。
それから、私は「ほんけ」につれてこられた。
立派なお屋敷だった。
ある部屋に通された。
そこにはお医者さんがいて、自覚症状の有無をいろいろ訊いてくれた。
腕の出血に関しては、処置どころか触れられもしなかった。
結果、「ただ単に気がおかしい」という診断がついた。そばで見ていた青年は微笑んだ。
自分のことのように喜んでくれた。
青年は笑っていた。
それは、たしかに内面からくる笑顔だった。
それから、ある部屋に連れてこられた。
すぐに殺されると思っていたけど違うようだ。
そこは、言わば牢屋みたいな部屋だった。
床は畳じゃなく地面だった。
ドアは鉄格子、トイレは穴みたいなのがある。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。