第9話

主人公side⑨
379
2018/01/01 02:49
ーー……

朝がきた。

一応、朝を迎えてしまった。

死んでいたら、迎えるはずのなかった朝。

昨日の傷を確認した。

血は止まっているけれど、ズクズクとして痛む。

一度起き上がったあと、また横になった。

しばらくして、向こうからみさきさんが歩いてきた。

ゆっくりとした調子。

機嫌がいいのかなんなのか、ニコニコしている。
みさき
みさき
おはよう。昨日は眠れたかな?
あなた

はい

みさき
みさき
そう、よかったねぇ。君さ、もうすぐ死ぬよ
平然と言った。
あなた

そうですか

平然と答えた。
みさき
みさき
あれ、意外だな。もっと驚くかと思ってた
あなた

どうでもいいです。生きるとか死ぬとか

みさき
みさき
へぇ。そんなものかな
あなた

はい

そのあと、彼はしばらく考えていたけれど、
みさき
みさき
つまんない
そう吐き捨てると踵を返して立ち去った。

それから、みさきさんと呼ばれていた人は来なくなった。



ーー

ーーー

そして、一週間がたった。

みさきさんは、あれ以来こなかった。

私は起き上がることが困難になっていた。

傷口は茶色くただれていた。

3日前から熱が出た。

そのせいで痛みは感じなかった。

分家の情報を持っているだろう? 吐けば食事をやるぞ
1日1回中年のお侍が訊いてくる。

彼の手にはにぎり飯があった。

みさきさんはどこにいるのだろう。
あなた

何も知りません

馬鹿なやつだ。どうせ刺客なのだろう
男は、ため息を吐いて去っていった。

にぎり飯が私の手に渡ることはない。

寒い。とにかく寒かった。

プリ小説オーディオドラマ