ーー……
朝がきた。
一応、朝を迎えてしまった。
死んでいたら、迎えるはずのなかった朝。
昨日の傷を確認した。
血は止まっているけれど、ズクズクとして痛む。
一度起き上がったあと、また横になった。
しばらくして、向こうからみさきさんが歩いてきた。
ゆっくりとした調子。
機嫌がいいのかなんなのか、ニコニコしている。
平然と言った。
平然と答えた。
そのあと、彼はしばらく考えていたけれど、
そう吐き捨てると踵を返して立ち去った。
それから、みさきさんと呼ばれていた人は来なくなった。
ーー
ーーー
そして、一週間がたった。
みさきさんは、あれ以来こなかった。
私は起き上がることが困難になっていた。
傷口は茶色くただれていた。
3日前から熱が出た。
そのせいで痛みは感じなかった。
1日1回中年のお侍が訊いてくる。
彼の手にはにぎり飯があった。
みさきさんはどこにいるのだろう。
男は、ため息を吐いて去っていった。
にぎり飯が私の手に渡ることはない。
寒い。とにかく寒かった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。