冗談は時を越えても通じるらしい。
なら言ってみよう。
だめもとでお願いしよう。
そう思った。
みさきさんが見える。
とてもきれいな顔だな……そうか、ここは夢?
ーーなんて暗い夢。
まぁ、いいや。
もう終われる。
みさきさん、お願いします。
大きなひとみが見開かれる。
きれいな目だな。
そこで意識が途絶えた。
ーー
ーーー
目が覚めた。
傷口に手を持っていった。
けれど、感覚はなかった。
腕を触っているけれど、それが自分のものとは思えなかった。
まるで、麻酔が効いたときみたいに感覚はない。
それに、昨日までの景色と違う。
湿気を帯びた檻の中は、とてもくらかった。
けれどここは明るくて、ちゃんと屋根がある。久しぶりの部屋のなかだ。
となりを見た。
みさきさんがあぐらをかいて座っていた。
みさきさん、と言おうとした。
けれど、声が出なかった。
困っていると彼は笑った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。