「へぇ…まだ戦うんだ?
もう、俺の勝ちは確定しているのに。」
先輩は無表情のまま私を見下ろす。
その瞳は驚くほどに冷たくて、思わず言葉に詰まりそうになる。
それでも…私は、ここで負けを認めるわけにはいかないんだ。
亜紀のためにも、戦わなくちゃいけない。
それにまだ、今なら亜紀も助かるかもしれない。
はやくこのゲームを終わらせて、亜紀を助けるんだ…!
「まだ…ゲームは終わってない。
だから……
私は戦う…!」
「…なら、好きにすればいいよ。どうせ俺の勝利は決まっている…。
それに菜波はルールを違反したから、ペナルティとして次からそのカードは使用禁止だ。」
そう言って先輩は、私が亜紀から受け取ったクラブのKのカードを指差した。
「…わかりました。」
私はそう言うと、動かない亜紀に歩み寄ってクラブのKをその手に握らせた。
亜紀の手についた血が、私の手につく。
……まだ、僅かにだけど息はしてる。死んでない。まだ助かる可能性はある…!
「それじゃあ、始めようか。…これで終わりだ。」
私と先輩は足元に落ちているサイコロを一つづつ拾い上げて、立ち上がる。
先輩は、ニヤリと妖しい笑みを浮かべて。
私は、鋭く先輩を睨みつけながら。
そうして、最後のゲームが幕を開けた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。