放課後、私は亜紀と風紀委員がいつもいる教室に向かっていた。
ちなみに、この学園での風紀委員というのはいわゆる警察のようなものだ。
校則違反や風紀を乱すものを徹底的に取り締まる組織……それが風紀委員なのである。
ちなみにその取り締まり方法はえぐいくらい酷いらしいので省略。
「確かこっちだったよねー?」
亜紀が端末の地図を見て通路を指さす。
普段使う通路は覚えたものの、校舎全体となるとまだちょっと不安なのだ。
私も地図機能を開いて確認し、
「うん、合ってると思う!」
廊下の角を曲がってしばらく歩くと。
ドンッ 誰かにぶつかった。
「きゃっ!あ、すみませ…」
「大丈夫だよ。それにしても、こんなところにいたんだね。探したよ、菜波。」
抱きとめられたかと思うと、不意に頭上から降ってくる声。
思わずひっ と声を漏らして顔を上げると、先輩が笑顔で私を見ていた。
「なん…で…」
「今日は俺の部屋に来る予定だったろ?なかなかこないから迎えに来たんだ。
そういえば菜波が部屋に来るの久しぶりだな。いつぶりだったっけな…1週間くらいか?あの時は楽しかったよな。」
「やめて…」
狂ったように喋り続ける先輩に、心の底から恐怖が湧き上がってくる。
体の震えが止まらない。
何で…何でこの人がここにいるの?
私、先輩の部屋なんて行ったことない
「可愛かったなぁ、あの時の菜波。すごいテンション高くてさ、はしゃぎながら俺のアルバム見てて…意外な一面っていうか。いつもよりずっと楽しそうで…」
「いやっ、やめて!違う!!」
出せる限りの大声で叫ぶ。それをものともせずに笑顔で受け止めると、首を傾げて言う。
「何で?…あぁ、もしかして恥ずかしいのか?本当に可愛いなぁ。それに、あの時の顔すごくよかったよ。必死で抱きついてきてさ…俺達そういう相性もいいみたいだよな。菜波も…」
「やめてやめてやめてやめて!!嫌だ、違う!私そんなことしてない!!」
両手で耳を塞いでブンブンと頭を振る。
やめて!もう聞きたくない!!
「忘れてたのか?意外と抜けてるところあるんだな。でもそんなところも大好きだよ。菜波は本当に自慢の彼じ…」
「菜波が、違うって言ってるじゃない!」
亜紀の大声に、私は弾かれたように顔を上げた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。