第102話

家族ってなに
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2019/08/22 05:08
少ししてから、お父さんも入ってきた。

お父さん
こんな夜遅くまでどこに行ってたんだ。
あなた

…………。

誰のせいだと思ってるの。
お父さん
まさか、私達が居ない間でもこんな夜遅くまで出歩いているのか!??
今の時刻は12時過ぎ。
あなた

家にお父さんとお母さんが家にいないんだから、何時に帰ってこようと私の勝手じゃない?

先生
あなた。
少し強めに制止され、黙る。


「俺も一応親だからな。」そう言っていたのを思い出す。
先生
ですが、お父さん。この時間まで出歩かせることになった原因はなんですか、??
先生がそう言うと、バツが悪そうに目をそらした。


そして、お母さんが紅茶を出してくれる。
先生
ありがとうございます。
…では、早速ですが…………

そう言った後、メガネを取り、前髪をかきあげた。


っ!
先生
これが、本当の私の姿です。
これだけ私が真剣だということをわかっていただきたいと思います。
正直、先生がこの姿になることは予想していた。


何となく、先生ならこのくらいするかなって。


お父さんとお母さんは、驚いたように先生を見つめた後、お父さんが口を開いた。
お父さん
わかりました。
それで、お話というのは…?
先生
はい、単刀直入にお伺いします。
家族ってなんでしょうか。
急に質問を投げかけ、少し困ったような表情をした。


正直な気持ちは、さっきのレストランで吐き出した。


ずっと、心の奥底にしまって、隠してた。


私の気持ちを知った今、2人はどう思うんだろう。
お母さん
私は、いつもそばにいてくれるのが当たり前の存在。ですね。
いつもそばにいてくれるのが当たり前…?


いつもそばになんて居てくれなかったくせに。
お父さん
私は、陰ながらずっと支えてくれて、支え合えるような家族が理想です。
先生
“理想です”…とは?
お父さん
実際には、なれていると思ってません。
小さい頃からあなたを1人にして、家族なんてただの名前に過ぎない。支え合って、いつもそばにいてくれて、愛して、愛されて、あたたかくて……そんな家族にはなれていない。
先生
分かっていて、どうして何もしなかったんですか?
その通りだと思った。


そして、しばらく沈黙が続いた。


きっと、お父さんとお母さんの思ってることは、多分、一緒。
お母さん
あなたなら…………大丈夫だと思ったの。

寂しげな表情で、私をみながら言った。
お父さん
寂しいなんて言わなかったし、私達の仕事を応援してくれていると思っていた。
それから、何より、あなたの気持ちがよくわからなかった。
あぁ、そういうことか。


そりゃ分かんないよね。


困らせたくない。その一心で私は…
あなた

大丈夫じゃないよ。寂しいよ。
陸とか千紗の家族に憧れたよ。
………私がお父さんとお母さんに本当の気持ち隠してたのは、あの時からだよ。

そう言った瞬間、2人はハッとしたようにこちらを見た。


覚えてることは覚えてるんだね。


あの時……


そう、あれは私がまだ私が6歳だった頃の話。

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