第103話

昔の話
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2019/09/01 08:26
あなた

お母さん…

あの日は風邪をひいて、一人きりだった。


お手伝いさんの、佳奈さんはなぜかその日は居なかった。


熱が出て、頭が痛くて、このまま1人で死んじゃうんじゃないかとも思った。


そんな中、お母さんが帰ってきてくれた。
お母さん
大丈夫、?あなた。
そう問いかけられ、軽く頭を振る。
お母さん
ちょっと、色々買ってくるからね。
お母さんが階段を降りていく音がなんだか嫌だった。


お母さんが買い物から帰ってきて、少しするとお父さんも帰ってきてくれた。


きっと、あの時期はかなり忙しかったはず。


そんな中2人が帰ってきてくれて、そばにいてくれるのはものすごく嬉しかった。


正直、このままずっと風邪をひいていたいと思った。


でも、廊下で話している2人の会話が耳に入った。
お母さん
会社は大丈夫なの??
今の時期、一番忙しいでしょう。
お父さん
あぁ、まぁそうだな。 
正直、今すぐに進めたい。
お母さん
だから、私一人でいいって言ったのに!
仕事の事でで頭がいっぱいでしょう??
お父さん
しょうがないじゃないか、あなたがいるんだから!
お母さん
全部あなたのせいにするの!??
お父さん
そんな事一言も言ってないだろ。
そもそも、お前が家にいないから!
お母さん
なによ!私は仕事が生きがいみたいなものなのよ!?辞めろなんて言われてもできない!
お父さん
…はぁ
大きなため息をつき、一言言った。
お父さん
やっぱり俺らは仕事が一番なんだよな。
“仕事が一番”


なら、私は?家族は?


……何番目なんだろう。


私は、幼いながらこの会話を聞いて思った。


お父さんとお母さんに迷惑かけちゃダメだって。


2人は、仕事が一番。


もし、私がなにかやらかしたら…………


そう考えると夜も眠れなくなる。


いい子でいなきゃ。


そう強く思った。

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