第51話

準備室にて
3,385
2018/04/03 01:38

……緊張する…。


もうすでに帰りたい…。


私は今、準備室の前にいる。


あぁ、どうしよう。


いや、でも行くしかないよね。


そうだよ!頑張れ、あなた!!!


コンコン
あなた

失礼します。

先生
はいー。
先生は、いつもと同じように、椅子をこちらに向ける。


でも、私を見た途端、固まった。
先生
どうした。
あなた

話そうかと思って。

先生
…何から話す。
私はソファに腰を掛け、


先生は、私の前に座った。
あなた

じゃあ……莉世さんは元気になった?

先生
おう、もう元気。
あなた

そっか、良かった。
それで…離婚は……?

先生
まだ分からない。
ちゃんと話せとは言ってるんだけど…
あなた

そっか。

先生
なぁ、あなた。
俺は、莉世と結婚する気は…
あなた

でもさ、それがななちゃんの為だってなったら?

先生は、不意をつかれたような表情をする。


あぁ、やっぱり。


ななちゃんのことになると、先生はやっぱり弱い。
あなた

もし、莉世さんが離婚して、ななちゃんと2人だけになったら、
ななちゃんもパパがいなくなって、寂しいと思う。
それに、その方がみんな幸せだよ。
莉世さんも…

先生
待て。
私は先生に止められ、黙る。


けど、先生はなかなか口を開かない。


だから、私は言った。
あなた

先生、迷ってるでしょ。
ごめんね、先生。実はさ、おふろ入る前に部屋に行った時も、覗いちゃったの。
その時、先生は、莉世さんの事を愛おしそうに、でも悲しそうな複雑な表情をして見てた。
先生は、莉世さんの事を嫌いなわけじゃない。それに、ななちゃんの為と思えば……


そこまで言い終わると、急にドアが開いた。
青木先生
直樹〜。
…あれ、お話中だった?

私と先生を交互に見て言う。
あなた

いえ、大丈夫です。
今帰るとこでしたから。

本当はまだ話したかったけど、今日は帰ることにする。


私は立ち上がり、ドアへ向かう。
先生
待てよ。
私はそのまま外に出ようとする。
先生
話し合わずに…逃げんじゃねーよ。

あぁ……



私はその一言で、イラっとする。
あなた

…そう言うけどさ。
先生はどうなの?
莉世さんとあれから話したの?
本気で…自分の意思をちゃんと言ったの?


先生は何も言わない。
あなた

先生こそ……逃げんじゃねーよ。


準備室に私の声が響く。

あなた

じゃあ、先生の意志が決まったら呼んで。


私は、準備室を出て、家に帰った。

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