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第1話

けんかっち
1,778
2018/01/02 06:29
今回の喧嘩は完全に俺が悪い。っていうのは、わかってた、けれども。
涼介
あなたが行きたいって言ってた遊園地、行こ?
あなた

涼介 にがてでしょ?

涼介
じゃあ、この前見たいって言ってた映画ーー、
あなた

もう上映してないよ

涼介
…あの、あなたさん
あなた

うん、なぁに?

にっこり、効果音がぴったりな完璧な笑顔はまさに仏像のようで、ああ、これはやってしまったなと激しく後悔する。
涼介
ほんと、あの日はごめんって…
あなた

私、怒ってないよ?

にっこり、何を言ってもこの笑み。
絶対に怒ってる。

仲直りするために仕事前に時間を作ったけど、もうそのタイムリミットも迫ってきていた。
あなた

…もう時間でしょ、また連絡するね

涼介
ごめんな、…分かった。じゃ、またな
これまで喧嘩した時は、もっと、こう…
こんなに冷たくなかった気がして、少し不安が頭をよぎるのだった。


▲▼▲▼
涼介
ってわけなんだけど、どう思います?
あなたとも俺が嫉妬するくらい仲が良くて、俺と付き合う前に恋愛相談にも乗っていた知念に話を聞いてみる。
知念
あー、涼介振られるね?
涼介
はぁぁあ…まじで?
相変わらず毒舌な知念は俺の話を聞いて笑ってそう言った。「まず、遊園地に誘うとことかあますぎ」とか。「女の子のことわかってない」とか。
涼介
デートの日俺が寝てたのが悪いんだけどさ…、
知念
昨日電話した時、あなたかなり落ち込んでたもんな…
涼介
え、
知念
その日、ほら、僕らの十周年の記念日だったでしょ?お祝いのためにたくさん準備してたみたいで。かなりショックだったみたい…
知念からのその言葉を聞いて、いてもたってもいられなくなった。
俺、最低だ。
大貴
あ、山田。いたいた
涼介
あれ、どうしたの
大ちゃんが深刻そうな顔をして楽屋に入ってくる。
何か仕事関係のことかと思うと、
大ちゃんの手に持っているものになにか見覚えがあった。
大貴
これ、さっきあなたが…渡してって。
その紙袋の中には、俺が記念日にあげたペアリング。
あなたが肌身離さずにネックレスにして付けてるものだ。
もちろん、今俺も付けているだいじなもの。

もう、いらないって、こと。
知念
今ならまだ間に合うよ、行ってきな!
知念の言葉に黙って頷く。
ロッカーにしまった上着をとろうと、ロッカーを開けたその瞬間だった。


あなた

涼介、ツアー、おつかれさまっ!

ロッカーから飛び出してきた大好きな人は、満面の笑みでクラッカーを鳴らした。
涼介
は?え、…は?!
大貴
めっちゃポカンとしてる
知念
ドッキリ大成功~!
あなた

涼介にちょっと、イタズラしてみよーって思って、みんなに協力してもらったの。どう?ビックリした?大変だったんだから、笑いこらえるのーーーわっ!

俺はいつの間にか彼女を抱きしめてた。
クラッカーの火薬の匂いと、
彼女の優しい石鹸の香りがする。

安心、した。
涼介
別れないよな?
あなた

そうだなぁ、涼介が遊園地連れて行ってくれて、たくさんお出かけして、それから

涼介
んなもん、いくらでも連れてってやる
あなた

ふふ、頼もしいね?

大貴
あのー。俺たちの存在忘れてるでしょ?
知念
ほんとに。あなた、たまには僕とも遊んでよね
あなた

ごめんね、二人ともありがと

涼介
お前らに俺まんまと騙されたのかー…
二人の得意げな顔がちょっと悔しく感じる。
あなた

じゃ、サプライズ大成功ってことではい!

彼女がすっ、とスマホを取り出して構える。
写真を撮るのも忙しくて久々に感じる。

あなた

いくよ、はい、

「チーズ」をいいかける前に、
彼女の頬にキスをする。

あなた

〜〜!!!

涼介
しかえし。
また新しい思い出が増えましたとさ。

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