恥ずかしくて顔を見られない。
自分の足もとをじっと見ながらお礼を言う。
そう言いながら
優しく頭をぽんぽんされた。
きゅぅぅぅんとまた胸が鳴る。
ようやく顔を上げて、湊の顔を見る。
私は、恥ずかしくて嬉しくて
顔が真っ赤だというのに、湊は
普段通りの整った笑顔を見せている。
いつもそうなんだ。
意識しているのは、私だけで。
そう思ったら、なんとも言えない感情が
胸に一気に押し寄せてきた。
それを悟られないように必死に笑顔を作って
出来るだけ目を合わせずに言った。
湊がをとって、チケット売り場まで
行こうとした時、私はその手を
咄嗟に振り払ってしまった。
はっと自分のした事に気が付いて
湊の表情を見る。
驚いたような、そして悲しげな顔をしてした。
酷い事をしてしまった。
今更そう思い、言い訳を探す。
あまりにも苦しい言い訳だったが
湊はそっか、と微笑んでくれた。
でももう手は握ろうとしなかった。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。