写真に写っていた場所がどこなのか分からず、立ち止まっていた私をさとるんくんが引っ張ってくれる。
走って写真の場所へ向かう。ここからすぐの場所らしい。
確かに、写真の場所とは同じだけど……
しんちゃんの姿はなかった。
まーちんが私の背中をたたいてくれる。
かめむしくんが見せてくれた写真には、しんちゃんと岡本さん。写っている場所は、ここからそう遠くないらしい。
私を気遣ってくれるかめむしくんに頷いて、走り出す。私よりも、かめむしくんの方が疲れていそう。それなのに気遣ってくれるなんて、優しい。
ここがどこかもわからない私は、ただついて行くだけだった。
辺りを見渡していた時、さとるんくんが急に叫んだ。
すぐに人混みの中に消えてしまったが、あの後ろ姿はしんちゃんだった。
一斉に走り出す。人混みをかき分けながら進んでいく。
私が叫ぶ声も、人混みに消えていく。だけど、しんちゃんには聞こえたのか、それとも偶然なのか。しんちゃんが振り向いた。
さっきからしんちゃん、しか言ってない。それ以外の言葉は出てこない。
なにか言おうとしたけど、すぐに前を向いてしまった。いや、向かされた。岡本さんが耳元で何か言っているのが見えた。私の視力は、裸眼で1.5なんだから!
私が着くよりも先に、さとるんくんがしんちゃんの元へ着いた。
岡本さんは、怖いくらい冷静な顔をしている。
岡本さんの顔は見れなかった。ずっと笑顔が張り付いていて、怖かったから。
しんちゃんは、岡本さんから腕を組まれたまま立っていた。よく見ると、震えていた。
さいばくんが、大きな声で詰め寄る。だけど、岡本さんは微動だにしない。
組んでいた腕を離して、去っていこうとする。さいばくんが引き留めようとすると、
それだけ言って、岡本さんは人混みの中に消えていった。
聞きたいことは山ほどあるけど、まずはしんちゃんが見つかって、本当に良かった!!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。