分身・・・
私ともう1人の私の影が地面に伸びている。
「もう1人自分がいたらって言ったでしょ?そんな願いが私を呼んだんだよ」
確かに言った。さっきの友達と話しているときに。
「自分の分身いたら楽だよね〜!」
ということは・・・
「何か私が頼むことをしてくれるって事?」
「うん、そう!」
ふーん・・・これは使える・・・
「じゃあ、早速お願いしても良い?」
「うん、何でもするよ!私はあなたの・・・分身だから♪」
と分身は言うと、少しゾッとするほどの笑顔でニタァと笑った。
宿題の「いじめ防止促進ポスター」。
正直言ってしまうと、私はいじめなんてどうでもいい。
「これ、頼んでも良い? 過程はどうでもいいから、結果だけが欲しいの」
「了解☆」
頼むと、分身は部屋を出ていった。
「過程より・・・結果ねぇー・・・、本当にそうかな?」
そうつぶやくと、分身はまたニタァと笑った。
私はこの分身に名前をつけた。鏡子だ。鏡にうつしたように同じだからという意味で付けたのだが、凄く喜んでいた。それを見ていると、
「私って喜ぶときこんななんだ・・・」
とか、改めて自分を客観視出来る。
鏡子に頼むことが益々増えた。
私は気づかなかった。
自分が勝手に狂った正解を作り上げていることに。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!