第7話

7. 先生の悩み②
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2018/01/07 03:19



「暗くなっちゃったって…まだ来て少ししか経ってないだろ」



必死に話を遮ろうとしても、
何故か先生は私の腕を離さない。

ど、どうすれば…。
慌てておどおどしてる私を見て、
先生はクスリと笑った。



「そんなに慌てんなって…。まぁ、元々南雲が今日来た時間が遅かったからな」



そう言って私の腕を先生は離してくれた。
めっちゃ…ドキドキした。



「何してて遅くなったんだ?」

「あ、えっと…優香とちょっと話し込んでて。」


話し込んでた…というよりは、
『ツッキー!課題終わらないよ〜提出今日までなのに助けて』って泣きつかれて断れなかった…の方が正しいかもしれない。


「ん、そうか。」



そんな他愛のない会話をして、
何分か時間が経つと辺りは真っ暗になっていた。


……しまった。
限られた時間しかないのに、
なんで私は時間を有効に使わずに先生と普通の会話を繰り広げていたんだろう。

楽しかったけど…。




「ちょっと暗くなりすぎたな…送ってく。」

「へ?」


今、送ってく…って?
こ、校門までとかかな。


そう言って先生はハンガーにかけてあったコートを羽織って数学準備室を出ていった。

私もそれを急いで追う。



暗闇の中校舎をみることはあまりないので、
少し怖く感じる…。

それを先生は感じ取ったのか

「怖いか?」

と笑い混じりに聞いてきた。

「べ、別に…」

もっと可愛い返事はできないもんか、と思うが
なかなか可愛い返事はできなく、
いつもぶっきらぼうになってしまう。

「強がるなって」


そう言って先生は私の制服の裾を掴んで歩いてくれた。

_______なんでこんなに優しいんだろう。






少し歩いて職員用駐車場につくと、
先生は車の鍵をガチャッと開けた。


そして助手席を指差して「乗って」と一言私に言った。



言われた通り私は助手席に乗る。

本当に送って行ってくれるんだ…。




「えっと、南雲の家は…あのスーパーの近くか。」

「…?」



何で先生私の家がわかるんだろう。

キョトンとしてる私の心情を先生は読み取ったのか、


「あー…担任ってゆーのは生徒の家の場所結構覚えてるもんなんだよ」


と私に言ってきた。

まあ、たしかに先生が生徒の家に資料を届けたりとかあるだろうからおかしいことではないか…。


「よし行くか」


そう言って先生は車を走らせた。

先生の横顔をチラッとみる。

___________運転してる姿もかっこいい



「なんか、俺…生徒を車に乗せるの初めてかも」


「…そうなんですか?」


「…まぁ、普通に乗せちゃダメなんだけど」



普通に今先生とこの状況を楽しんじゃってるけど、
忘れてはいけない……
この2日後…先生が死ぬことを。



「あ、ここ」


先生が少し車を走らせたところで、
1つの家に指を指す。


「俺が住んでる場所」

「…!」


先生の家……。
そこまで大きくないから1人暮らしなのだろうか。

先生が自殺したとするならば、
先生は自宅で亡くなった可能性が高い。
いろんな先生から情報収集をして、
先生の遺体の第一発見者は父親ということは聞いている。

となると、
自宅で先生が亡くなった可能性は大いにある…。



この場所を覚えておかなきゃ。





先生と私の家の距離は割と遠くない。

これで先生が亡くなった場所。
自殺した理由の推測は大体はできた。



あとは…時間。
そして…本当に自殺かどうか。

そろそろ時間がない。




「ついたぞ」



私の家の前で車を止めてくれた先生。



「ありがとうございました」

そう言って軽くお辞儀する。



「じゃ、またな」

先生はそう一言言ってこの場を後にした。




「先生……私、必ずあなたの事助けます」

__この人を絶対助けなきゃいけない。

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