第10話

10. 信用②
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2018/01/07 07:08




「…で今に至るわけです」


先生にここまでの出来事を全て話した。
先生は否定することなく、
全て頷いて聞いてくれた。


「喫茶店…で意識失ったっていっても、この辺にそんな場所ないな…」


…私も迷ってたから、
本当に喫茶店があるかどうかはわからない。


「まぁ、不思議な現象が起こる分、不思議な場所に迷い込んでもおかしくはないな」

「ありがとうございます…」

「礼を言うのは俺の方だから…。ありがとな……つ…月姫」

「…!」



先生が今、私のことをしたの名前で呼んだ。

一気に顔が赤くなってしまう。



って違うぅ…、そんなことじゃなくて、
今は先生を助けることが優先だ。



「明日…先生がどうやって動くかによって…この後が決まると思います。」


「だよなぁ…俺が警戒して…親父の動きを止められれば」


「……それじゃ…ダメっ…!」




先生が警戒して父親の動きを止められればいいことだと思うが、
そう簡単にいかないと思う。

かと言って起きもしてない事件に対して警察に逃げ込むわけにもいかない…。






「もっと…頼ってください…。」



1人より2人の方が確実に解決には近づくと思う。

私に何が出来るかわからない。



それでも……先生を私が助けたい。




「…ありがとな」


そう言って先生は私の頭をそっと撫でた。



先生の大きい手…。
明日先生を救えたらこうなることは無くなるのだろうか…。

ちょっと悲しいが先生を救えたらそれでいい。




「先生…明日先生のお父さんは何時頃に来るのですか?」

「18時…くらいだったと思う」



18時…。

学校が終わってからでも間に合う時間だ。



_______これで全ての情報が揃った。



先生は何もしなければ、
明日の18時ごろ…先生の自宅で父親に殺されてしまう。


それを防ぐためには…。




「先生、こんなのはどうでしょう?」



私が先生の家の前に待機。

先生には予め体のどこかに
盗聴器をつけてもらう。

先生と父親の会話が危うくなってきたところで、
私が警察へ通報。

先生が本格的に父親に殺されそうになったら、
先生の自宅のインターホンを鳴らす。
そして時間稼ぎで警察を待つ。


この作戦を聞いてみたのだが…



「ダメだ」


却下されてしまった。


「それは…南雲も危なくなる。それにそんなことしなくても、俺が…医者への道へつけば、誰も危ない思いをせずに済む…それなら…」

「先生…!」



それではダメなんだ。
先生には先生の好きなことをして進んで欲しい。

これから苦しい思いをして自分で自殺を選ぶ可能性だってなくはない。

それに私は…


「先生が……好きだから先生には教師を続けてほしい」




……これが私の本音だ。

言ってしまった、と思い俯く。





少し経つと、私の体が急に暖かくなった。


_____ギュゥ



顔を上げると先生の首元が見えた。
先生が私を……抱きしめてくれてるんだ。




「ありがとな…南雲、明日……よろしくお願いします」


「……はい」



その後数分間はその状態のままだった。






そして何分か経ち、
外が暗くなってきた所で私は数学準備室を後にした。





__________明日、絶対に先生を助ける。

__________ねぇ、先生。

__________必ず貴方を守ります。






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