――俺は今までに少なくとも1000回以上転生をしてる。だから現実と理想の見分けもちゃんと着く。だから目の前の馬鹿共みたいにはしゃいだりしない。
そんな時、それを静止する声が入った。
「なぁ、聞いてくれ。俺はこれからの方針を決めようと思う」
その声で騒いでた馬鹿共は静かになる。流石はクラス1人望がある遠藤大河だ。こんな状況で浮かないで冷静――
「魔王討伐についてどうするべきか」
……めちゃくれ浮かれてたわ。
やっぱり平和ボケの日本人だな。今から魔王討伐の事を考えてもまるで意味がない。俺らが今行って倒せるならもう、とっくにこの世界の住人が倒せてるよ。こいう馬鹿な奴が指揮るとろくな事にならねぇ。さっさと離れよう。こっちまで迷惑が掛かる。
「ねぇ、どこ行くの?」
みんなが遠藤に注目するなか、俺のステルスに即行で気づいた奴がいた。しかし俺は面倒事は御免なのでそれを無視して行こうとしたのだが――
「ねぇ、ちょっと待ってよ!」
ガシッと腕を捕まれる。小声でそう怒鳴る女子の方に俺は仕方なく振り向く。
「なんですか。後藤さん」
迷惑そうな顔でそう言ってやった。後藤はそれに反応して少し顔をしかめる。
「なんですか? じゃないよ! どこ行くの? トイレ? 今、遠藤君が大切な話をしてるじゃん。ちゃんと聞こうよ」
アリが像を倒すために試行錯誤しても無駄だと思うんだけどな。
「……あれのどこが大切なのか俺には理解出来ません」
「どこがって、魔王を倒すための作戦を――」
俺はその言葉を遮って教えてやった。それがどのくらい意味がないことか。
「ゴミがいくら集まっても掃除機には勝てませんよ」
「――え?」
後藤さんは俺の発言に驚いた顔を見せる。
「もう1度言ってあげますよ。ゴミクズがいくら集まっても魔王には勝てないって言ってるんですよ。分かりましたか?」
「おいテメェ! 今なんつった!?」
それを聞いてたのか1人の馬鹿が首を突っ込んできた。顔に見覚えはないが、うちのクラスの野郎だろう。制服も着てるし。
「あ? うっせぇよ。黙ってろカス」
異世界は非情で非常だ。だから友人ごっこなどしていたら生き残れない。最終的には頭の良い奴に利用されて終わる。だから今までも静かだった自分を消す。
いきなりの俺の言葉に2人とも少し驚いた表情を見せる。しかし野郎の方は直ぐに表情を変える。それはもう怒りに満ちた顔だった。
「テメェが黙れよカス!!」
胸ぐらを男が掴みそう怒鳴る。そしてその怒鳴り声で一気に注目が集まった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。