翔はやっぱり優しい。
ひとつひとつが慎重に、そして丁寧だ。
ちゃんと確認だってしてくれるし、反応だけじゃなく、“私”だって、見てくれる。
男の本能的にがっつきたい思いもあるかもしれないが、欲を押さえて、してくれる。
だけど。
欲を解放させようと、舌を絡ませ、口内を犯す。
少し驚いた様子を見せつつも、翔も必死に、私に舌を絡ませてくる。
がっつけるよう、そう仕向けるため、大人の濃厚なキスをしたのは、私。
なのに、どうして、翔が謝るの?
やっぱり、私だけが求めているのだろうか。
やっぱり、冷たい。愛が感じられない。
翔は、私のこと
どうしよう、結局、私はただ被害者面してただけで、一番傷ついてしまっているのは、翔だ。
愛を感じれていなかったのは、私なんかじゃない、
翔だ。
私は、一体、翔の何を見てきたんだろう。
優しさに甘えていたのは、私だ。
本当、最……低
優しくなんてない、優しいのは、翔のほう。
知らないうちにたくさん傷つけて、愛を与えられてなくて、ごめんね。
ぎゅっ
……やっぱり、私は、どうかしてる。
こんなときでさえも、先輩のことを、考えてしまっている。
重なる。名前を呼ぶ声が
重ねてしまっている。
こんなこと思う資格すらないけど、会いたい。
先輩に、会いたい。
翔、ありがとう。
私の気持ち、気づかせてくれて
宿題の“答えの意味”わかったよ。
でもだからこそ、このままじゃいけない。
背中を押してくれた翔の為に、私自身の為に、先輩の為に。
気持ち、伝えます。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。