(あの春は面倒くさかったなぁ)
そんなことを考える人とはみられなかった新入生代表挨拶。
あのように華々しい姿を見せた後、この様だ。
クラスでは一応、維持しているが、実際今の状態は限界にも近いものだ。
パーフェクト少女というのもなかなか難しいものである。
だが、唯一その着ぐるみから抜け出せる場所があった。
階段を下り、隣の棟へと向かう。
その棟の突き当たりにある教室。
旧1-9だ。今は違う。
きれいな扉。
旧1-9は、3年前に存在したクラスだ。
2年、3年の教室は少し広いが、1年の教室は全体的に狭い。
だから、臨時で1-9をつくったのだ。
一応きれいな教室だ。見た目は…。
今では部室になっている。
靡く黒髪。着こなす制服。彼女の美しい足取り。長い指が戸に手をかける。
千樹先輩、三筆千樹(みふでせんじゅ)は彼女の部活の部長だ。
外見で言うと、可愛げのある、優しい先輩だ。
島ノ瀬だけでなく、他校でも有名、というか、ファンが多い。
((とくに女子ファンだ。))
内面は、色々な意味で凄いらしい。
千樹は何か大切なものを探しているようで、服が埃まみれだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。