千樹のワイシャツの袖には埃がくっついていた。どころではない。灰色に染まりつつあった。
きっと大切なものを探しているのだろう。
手伝うべきだと判断した。
言いたかったが、取りあえずおさめた。
残念ながら、後にも引けず、結局手伝うことになった。
それから、5分たっだろうか。
はっと気づいた。
あれだけ汚れるのなら、大切なものなのだろうという勝手な思い込みがいけなかったのだろうか。
千樹は3秒、いや、5秒ほど溜めてから、
これが、大切なものと…。
((大層、安っぽいものですね!?))
というツッコミが出てきそうなほどだった。
私の聞き間違えかもしれないとばかりに、もう一度問う。
やはり、返事は変わらない。
異常な期待からか、“輪ゴム”と聞いた瞬間、
この人は 阿呆なのだろうか? という疑問しかわかなかった。
もう、この問いかけはあきれたどころか、諦めたといった方が似合っていた。
こんな天然先輩の部長で大丈夫だろうか…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。