「夢?...いや、そんなはずないよね!...」
その時、今まで頭にかかっていた雨が途切れた。
ふと上を見ると、傘を私にさしている一也がいた。
「何してんだよ、ドボドボじゃん」
「...傘ないの。ってか、一也が濡れるからいいよ。元カノの私になんてさしてくれなくても」
「でも、好きだった人だから。...まあ、今もだけど」
「...今も?」
予想外の発言に驚きを隠せない私の目を手で覆って、
「やっぱり好きだよ、芙美...芙美は、最近可愛いし、男子にも人気だし...俺なんかより、他に合う人がいるんじゃないかって...別れようって思ったけど...やっぱ無理だった...芙美がいい」
いつもより少し高めの声で、一也は言った。
なんとなくだけど、顔が赤くなってるんだろうなって、想像出来た。
目から一也の手を離して、一也に抱きついて、
「私も、好きだよ。ほんとにほんとに好き!...一也に見合う人になりたくて、一也に可愛いって思って欲しくて、ダイエットもメイクも頑張った。」
私がそう言うと、
一也は私を抱きしめて、
「ありがとう」
と言った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。