やがて意識がぼんやりとしていき、
あぁ死ぬんだ私…と消え薄れいく意識のなか冷静にそんなことを考えていた。
「ねぇ!いま……よね!」
「それは……だよ」
「……!」
「……」
なんだか騒がしい。
ぼんやりとした意識のなか、男女の声が聴こえてくるのが分かる。
目を開けてみるがぼんやりとしか見えない。
--あれ、私どうなったんだっけ…
確か川に流されて…
ここは天国?私やっぱり死んじゃったのかな…
「だいくん!見て見て!
起きたみたいよ!」
「本当だ!かぁわいいなあ〜
目元の辺りなんて晴香にそっくりだな〜」
「そうかしら〜
あらあら、まだ眠そうにしてるわね〜」
再び聴こえた男女の声の方に目線を向ける。
--お母さん!?
…それにお父さん!
あ、私助かったんだ!
良かった〜
喜びもつかの間、私はすぐに異変に気付いた。
--お母さんとお父さん、だいぶ若い?
…それに私…、声が出せない…。
それに何だか動き辛いし…。
その前にお母さん達、大きくない!?
手を一生懸命、目の前に持っていくと、可愛らしいプニプニの小さい手が視界に入ってきた。
--…私、赤ちゃんになっちゃったの!?
「あ〜ジタバタしてますね〜可愛いですね〜」
うふふとお母さんは微笑む。
「愛ちゃんは可愛いな〜」
そう言いながらお父さんが私を抱き上げる。
「だいくんのことジーッと見てるわね。
もう愛ちゃんはママ達のこと分かるかな〜?」
--…お母さん達が若いってことは…もしかして私、赤ちゃんの頃にタイムスリップしてるの!?
何で!?
「一生懸命ジタバタしてるのね〜。パパのことイヤなのかな〜?」
お母さんはイタズラに笑う。
「パパのこと、大好きですよね〜?」
「ママのことも大好きですよね〜?」
オモチャをカランコロン鳴らしながら2人は言う。
私は何でタイムスリップしてしまったのか、どうしたら戻れるのかを考えたかったが、突然の出来事に頭がついていかない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。