声になったか分からないほどの声で謝る。
たっくんの口から出た "好きな子" という言葉が強く鼓膜を揺らす。
思ってもみなかった言葉にフリーズする。
ボロボロの涙腺にさらに追い打ちがかかる。
今じゃなくてもっと……ちゃんと向き合えた時に。
でも、たっくんがこうならなかったら会うことも無かったかもしれない……あぁ、幸せってなんなのかな。
ちゃんと言葉に出来たかはわからない。
でも、自分の奥でドキッと音を立ててたものを言葉にした。
たっくんが満面の笑みを見せる。
これがたっくんなりの優しさ。
絶対に悲しむ姿も、涙も見せない……でも、その大きな瞳は涙で濡れていた。
返事をすると、たっくんはおもむろに私の正面に立った。
ちゃんとまっすぐ目を見つめる。
たっくんの瞳の奥に、ぼんやりと二人の未来が見えた気がした。
ゆっくりと目を閉じると、たっくんの顔が近づいてくる。
触れることは出来ないけど、確かに唇の温もりは伝わってきた。
初めてで終わりのキス。
夢のデートの終わりを告げるキスだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!