第19話
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一度深呼吸をして、部屋に入ると、ベッドの上に誰よりも会いたかった人が眠っていた。
顔も傷だらけで、酸素マスクもはめられてて、全然姿はさっきと違うけど誰よりも会いたかった人。
パイプ椅子に座り、たっくんの左手を握る。
手の温もりが伝わってきて、生きてるってことを改めて実感する。
手をギューッと握ると、人差し指がピクッと少しだけ動いた。
ゆっくりと目を開ける。
その瞬間せっかく止まった涙がまた溢れ出した。
不思議そうな顔で私を見る。
きっと自分は死んだと思ってるんだろう。
たっくんに軽くデコピンをする。
会話の一つ一つで幸せを実感する。
触れられること……たっくんの笑顔が見れること。
ほんとに何気ない当たり前のことなはずなのに、そんな当たり前がなによりの幸せに感じる。
男らしいゴツゴツした手で私の涙を拭う。
たっくんの顔には、あの時の悔しそうな表情はない。
私も、作り笑いなんかじゃなくて、ほんとの笑顔でたっくんを見つめる。
傷だらけの体を起こしてたっくんがまっすぐ私を見る。
さっきまでのにこやかな表情から真剣な顔に変わる。