自分のどこか奥底に眠っていた記憶がたっくんの言葉で全て蘇った。
たっくんの言う通り……私にとって今日は3回目の七夕だ……。
1回目の七夕の日は言う通りで普通に学校に行って、勉強して、普通に過ごしていつぶりか分からないぐらい久しぶりに家族で夜ご飯を食べるはずだった。
だけど、家に帰ったらママはいなくて、ドタバタして外出した形跡があったから、きっと緊急の搬送があって呼ばれたんだって察して冷凍庫にあるホットケーキをチンしようとした時に電話が鳴り響いた。
電話の相手はママ。そこで告げられたのは、朝大きな事故があって緊急搬送のためにママが病院に出勤したこと……そしてその運ばれてきた患者さんがたっくんだったこと……たっくんの意識がもう戻らない可能性が高いってこと。……。電話をすぐにでも切ってしまいたいぐらい悲しい真実ばっかりだった。
なにも持たずに病院に走って病室に駆け込んだら、体も顔も包帯だらけで誰かさえも認識出来ないたっくんがベッドの上に寝ていた。傷が酷いことぐらい私だって想定してた。でも、やっぱり大好きな人のそんな姿をいざ目の前にすると、何もかもが頭の中でこんがらがって、目の前のがきっと人違いってことを信じたくて、いろんな感情が交差してるうちに私は気を失っていた。
そして、2回目の7月7日が始まった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!