第14話

story
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2018/02/01 13:00
翌日。
テスト答案の返却日。
私の顔を見ても特に顔色を変えることなく、
いつも通り淡々と生徒の名前を呼び、
一人一人に何かコメントをしていってる。

『好きでいてもいいですか?』

きっと先生は"やめとけ"とでも言うんだろう。
いや、もしかしたらノーコメントかも。
今日のことが、
気になって気になって眠れなかったんだ。
寝たら夢をみてしまうから…
先生に何度も冷たい言葉を放たれる夢を…


テスト頑張ったら少しは心許してくれるかもしれない、なんて甘い考えだったかも。
きっとこんなんじゃ、
先生の気持ちは何も変わらない。
むしろ、重荷としか思われてないのかも。
そう考え込む私には目もくれず、
先生はどんどんと生徒の名前を呼んでいく。

そして、…
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
…本谷
本谷 蘭 (もとや らん)
…はい
名前を呼ばれ、
平静を装って教壇の前に立った。
先生は手元の答案用紙に目を落としたまま、
私の方を見ようとはしない。
その態度で、
先生の気持ちはなんとなく理解ができた。
面倒な生徒だと思われてる…。
今さらながらになんであんなことしたんだろうと後悔の波が押し寄せる。
けど、その後悔もまだ良い後悔。
だって、やって後悔してるんだもん。


『やらずに後悔するより、やって後悔しろ』


そうだよね、先生。
何も言わず、差し出された答案用紙を
私も黙って受けとる。
席に戻った瞬間、
恐る恐る答案用紙を見た。
本谷 蘭 (もとや らん)
!!
90点。


やった…国語で90点なんて初めてとった。

嬉しい…。
これも先生のお陰だなー。
なんて思いながら、
答案用紙を凝視していると


一番下の

【今回のテストを終えた感想】

が目に入る。



思わずゴクリと唾を飲む。
そして、震える手を握りしめながら
先生の綺麗な字を読んでいく。



『好きでいてもいいですか?』


そんな私の告白の下には、
真っ赤な字で…



『ご自由に』


と書かれていた。




思わずバッと先生の方を見た、が
先生はやっぱりこちらを見てはくれなかった。
けど、




『ご自由に』




たったこの5文字だけで…



私は幸せに感じるんだ。





変な感覚に陥ってしまいそうになる自分をしっかりとおさえる。


先生はただ教師として生徒を傷つけまいと優しい行為をしているだけであって、
決して先生個人の気持ちではない、と。
一生懸命自分にいい聞かす。











先生、


私ちゃんと勘違いはしないから


安心してね?



先生、


ありがとう。

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