第2話

story
357
2018/01/07 05:04
本谷 蘭 (もとや らん)
ふぁ…
眠すぎる…


高校入学式。
校長先生の話が長すぎて
周りの先生たちにバレないよう、
こっそりとあくびをした。



長い長い先生たちのお話がやっと終わって
外に張り出されている自分たちのクラス表を見に行く。
私のクラスはどこかな~…と、
自分の名前を必死に探していると、
美山 葵 (みやま あおい)
蘭、蘭、蘭~!
一緒のクラスだよ!!ヤッタよー!
そう大声で叫びながら私にハイタッチを求めてくる
私の親友の美山 葵(みやま あおい)。
本谷 蘭 (もとや らん)
え、まじ!?
やったじゃーん!!!!
入学早々ついてる!!
6組まであるのに同じクラスになるなんて。
私達は一緒に自分たちのクラスに入り、
名前が書かれた席に腰を下ろした。
美山 葵 (みやま あおい)
やっぱ番号順だとうちら前後の席やね(笑)
本谷 蘭 (もとや らん)
んね!"もとや"と"みやま"だもん(笑)
美山 葵 (みやま あおい)
先生どんな人だろー
イケメン求む!!
そう目を輝かせて扉の向こうを見つめる葵。
またイケメン探しか…。
と、呆れてため息をはく私をよそに、
葵は先生どんな人だろ~と楽しみにしている様子。
葵はほんっとにイケメン好きだもんなぁ。
小さい頃から一緒にいるけど、
彼氏は全員イケメンくんなんだもん。
葵は凄い美人だから男の人が周りに絶えないし…。
羨ましいなーと1人ぼーっと葵を眺めていると
先生らしき人が教室に入ってきた。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
初めまして
教卓の前に立ち、
黒板にカツカツと何かを書き出している先生を皆は呆然と見つめている。

そりゃそうだよね。
こんなイケメンな先生だとは思ってもみない。
この先生、なんで先生になったの!?
ってくらいの。

黒板には


【椎野 雅紀】 と書かれている。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
椎野 雅紀(しいの まさき)です。
これから1年、宜しく。
そう短く挨拶をした先生。
少し長い黒髪に、黒縁メガネ。
イケメンなのに残念なのが…
なんで寝癖…?(笑)
ピヨンと跳ねた髪の毛に思わず笑いそうになる。
その寝癖も可愛く思えてしまうのはきっと先生がイケメンだからだね。
生徒
先生!質問!
一人の派手な女子生徒が元気よく手をあげた。
金髪で制服も気崩しているその子にギョッとした。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
はい?
生徒
先生は彼女とかいるのー?
生徒がため口!?
イケメンな先生にはギャルの女の子が質問する。
うん、マンガとかで有りがちな光景。

こんなイケメンなんだから彼女のひとりやふたりいるでしょう。
でも先生の答えは意外なものだった。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
いや、いないよ(笑)
あと、星野。
先生にため口はやめような?
そう言って先生はその女子生徒に鋭い視線を向けた。でも…
女子生徒たち
キャーーーー!
女子たちは悲鳴のような声を上げた。
その声に思わず耳を塞ぐ。
女子生徒たち
カッコイイ~!!
へぇ。この女の子は星野さんっていうんだ。
…あれ。この先生。
ひょっとして、生徒全員の名前覚えてる…?


ていうか!この状況。
ダメダメ…これダメでしょ!
授業になるの!?これ!?
先生に夢中になって授業どころじゃないんじゃない!?


美山 葵 (みやま あおい)
ねぇ。先生、いいんじゃない?
葵が後ろから小声で話しかけてきた。
"先生いいんじゃない?"。
それはきっと私を気遣っての言葉だと思う。

私はまだしっかりと忘れられたわけじゃない。
あの日会ったあの男の人を。
忘れられるはずがない。
私にとって初恋だったんだもん。

あの日。
最後にあったのは中3の冬。
私が高校受験が終わるまでは会えない。
と告げたあの日だった。
あれ以来、一度も会えないでいた。
私は毎日のようにあの公園に通っていたのに。
あの人がいることはなかった。

"ありがとう。俺もだよ。"
私が好き。と呟いたら確かにそう返ってきた。

それってつまり、両思いでしょ?


せめて名前だけでも聞いておけば良かったと
今さらながらに後悔してる。


それを知ってるのは葵だけ。
だから葵はずっとその恋を引きずってる私を心配して色んな男の子を紹介しようとしてくれるんだ。
本谷 蘭 (もとや らん)
…ほんと。
…忘れられたら楽なのに
先生ではなく、黒板をぼーっと見つめ、
そう呟いていた。

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