第5話

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2018/01/08 07:16
美山 葵 (みやま あおい)
あぁ~~!!
やっぱ西崎先生彼女とかいんのかな!?
しーんと静まりかえっていた教室に
葵の声が響き渡る。
なぜ静まりかえっているかというと、
放課後の居残り勉強をさせられているから…です。
私と葵と、あとは…
宮本 輝 (みやもと てる)
んなもん、
直接西崎に聞けばいいだろ!?
毎回毎回そんなこと相談してくんじゃねーよ!
美山 葵 (みやま あおい)
はぁ!?誰があんたなんかに相談するかバーカ!
宮本 輝 (みやもと てる)
なにー!?
高校入学してすぐなぜだか意気投合して仲良くなった私の唯一の男友達、宮本 輝(みやもと てる)。
葵は大好きな西崎先生に彼女がいるかもしれない!と今にも泣き出しそうな顔をしてる。
そんな葵に輝は容赦なく、
キツい言葉をズバズバいい放つ。
毎日こんな感じだけど、
葵と輝はなんだかお似合い。
付き合っちゃえばいいのに…。

なんだかカップルに見える
二人がちょっぴり羨ましく思える。

こんな仲良しなカップルになれたらいいなぁ。
…そう思った。
けど、あれ?
私、相手いないじゃん!と自分で自分に突っ込む。
なんでそんなことを考えたのやら…。
宮本 輝 (みやもと てる)
いてっ!
美山 葵 (みやま あおい)
いったー!!何すんのよ!?
バンッ!と綺麗な音が鳴ったかと思えば、
輝と葵がなぜだか頭を抱え痛そうに顔を歪ませた。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
お前らーサボってんじゃねーよ
後ろから聞こえてきた椎野先生の声に
過剰に反応してしまう。
昨日のこと、まだ頭に残ってて…
先生の顔がまともに見られない!
背後から聞こえてくる先生の声に意味もなくドキドキする胸を抑えて下を向いた。
宮本 輝 (みやもと てる)
ひっでー!
てか、蘭は!?
俺と葵だけとか!
どうやら先生は手に持っていた本で
輝と葵の頭を叩いたらしい…
でも、私は叩かれていない…。
3人一緒にサボってたのに…なぜ。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
本谷は…いいんだよ
宮本 輝 (みやもと てる)
え、何その間!?
美山 葵 (みやま あおい)
いいなぁ蘭は先生に特別扱いされて♪
私も西崎先生に特別扱いされたぃ~
3人でギャーギャー言い争いをしてる…
3人…まるで友達みたい。
先生、普通に入っちゃってるし。
凄いなぁ、こんな先生初めて。
生徒ともしっかり打ちとけちゃって。
だからきっと、生徒に好かれてるんだね、先生は。
ボーッと、先生を見ていて思い出した!
昨日かしてもらった本、
もう読み終わったから返さなきゃ!
ゴソゴソと鞄から本を取りだし、
先生が話終わるのを待っていると…
ずっと葵たちの方を向いていた先生がふと、
こちらを向いた。
バチッと目が合う。
すると先生は
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
はやいな
口パクでそう言って、物凄くわかりづらいけど、
かすかに笑った。
思いがけない笑顔にドキッとする。
葵たちにバレないようにとこそっといたずらっぽく笑う先生…可愛い。
でもやっぱりすぐにいつもの素っ気ない先生に戻っていた。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
もうそろそろ帰れよー
先生は、部活終わりのチャイムの音に重ねて
"帰れ帰れ"と手でやりながらそう言った。
そんな些細なことでさえ、
可愛い。と思えてしまう。
美山 葵 (みやま あおい)
何が"もうそろそろ帰れ"だよ!
あんたが居残りさせたんでしょーが!
そう大声で言う葵を無視して、
教室から出ていく先生のうしろ姿をじーっと見つめた。
さっきの先生の笑顔が頭から離れない。
ドキドキがまだ鳴り止まない。
思わず教科書を抱き締めた。
後ろ姿でさえも見てるだけで、
やっぱりドキドキしてしまう。
なんでだろう?

ふと、先生がよく言う言葉を思い出した。



【やらずに後悔するよりやって後悔した方が良い】



そう言う、先生の声が頭の中でリピートされる。



何か、これから起こる。
そんな予感がした…。

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