第9話

story
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2018/01/31 09:39
宮本 輝 (みやもと てる)
…好きなんじゃないのか?
椎野のことが
…その言葉に何も言い返せなかった。
否定することも、できたはず。
なのに…
どうしてすぐに否定することができないの?


どんどんと流れ出てくる涙。
もう、抑えることができないくらい、
気持ちがあふれでてくる。

もう、ダメだ…。

そう思った途端、
私は走り出した。

こんな二人を、もう見てられない。
見なければよかった。
そしたら、こんなに…
こんなに苦しい思いをしなくても
済んだんじゃない?

ただただ走る私に何も言わず走ってついてくる輝。
誰もいない、屋上へとつくと、
私は腰を下ろした。
そんな私の隣に黙って腰をおろす輝。
宮本 輝 (みやもと てる)
何で逃げたんだよ
逃げた…?
私がいつ逃げたというんだろう?
本谷 蘭 (もとや らん)
逃げてなんかないよ
宮本 輝 (みやもと てる)
それが逃げだっていってんだよ。
本谷 蘭 (もとや らん)
何が!?
宮本 輝 (みやもと てる)
お前は…椎野のことが好きなんだよ。
でも、お前はあそこから…
椎野から逃げたんだ
まただ…。


"椎野のことが好きなんだ"。


その言葉を言われてしまうと、
私は何も言えなくなってしまう。
本谷 蘭 (もとや らん)
好きなんかじゃないよ…
だって、私はきっとまだ…
宮本 輝 (みやもと てる)
そ。じゃあ、美月先生と椎野が付き合っても何も思わないわけ?
本谷 蘭 (もとや らん)
いやっ!!
輝の言葉を遮るかのように、
私は大声を上げた。
本谷 蘭 (もとや らん)
嫌なの…椎野先生が、
誰かと付き合ってるとか、
そういうの考えると…
余計苦しくなるから。
でも、私…まだ
輝の言うとおり、私は
椎野先生のことが好きなのかもしれない。
惹かれているのは事実だ。
理想のタイプって感じで、好き。


でも、その"好き"が何なのか分からないんだよ。
だって、



私はまだ引きずっているから
あの日のことを。



あの日、出逢ったあの男の人のことを…。

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