第6話

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2018/01/25 09:28
美山 葵 (みやま あおい)
ちょ、マジでここであってんの!?
宮本 輝 (みやもと てる)
俺様の言うことにゃ間違いねぇって!
本谷 蘭 (もとや らん)
ちょ、ちょっと二人とも…
ここマンションなんだからもう少し静かに…
大声をあげる二人を注意しようとしたその時。
キーッとさびれた、古い音が聞こえて、
振り返ってみればそこには椎野先生が不機嫌そうな表情で腕組をして立っていた。
ひどい寝癖がついた髪。
今まで寝ていたのか、半開き状態の目。
思いっきりプライベートだろう。
いつもかけてるメガネはないし、
ダボッとしたTシャツに短パンといったラフな格好をしてる。
なんだか普段と違う先生にドキドキしている自分がいる。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
なんだ、お前らか
その声を聞いた瞬間、
ドキッと胸が大きく跳ねた。
…いつもより、低い声色。
先生だけど、先生じゃない。
今はただの男の人なんだよね…。

そんな先生を直視することができず、
無意識に握りしめた手のひらにジワリと汗が出る。
宮本 輝 (みやもと てる)
お、マジ先生だ!
ラッキー♪
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
何がラッキーなんだ…。
安眠妨害だ
そう不機嫌な声で言う先生に、
思わず笑ってしまった。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
…何で笑うんだ…?
そんな私を先生は怪訝そうな表情で見る。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
ていうか、
お前ら何でここにいるんだ、
ハッとした表情で周りを見渡す先生。 
今頃気づいたのか…
自分の住むマンションに生徒がいるなんて…
なかなかないシチュエーションだろう。
美山 葵 (みやま あおい)
何でって自宅訪問ですよ~
そう言って葵が先生の腕に絡み付く。
葵はよく誰にでもスキンシップをとる人だから別に特に何も意味なくやっているんだろうけど…そうわかってはいるのに…
葵が先生にくっついている所を見ると、
何だか胸がキューッて締め付けられるようなそんな感覚がする。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
…美山は西崎先生のことが好きなんじゃないのか?
先生は腕に絡み付いてくる葵に不機嫌そうに顔をしかめた。
美山 葵 (みやま あおい)
そうだけど?
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
…好きなやついんならこういうこと、しない方がいいぞ
そんな先生の発言に
"先生超絶カッコイイ!"
と絶賛する輝。
美山 葵 (みやま あおい)
何それ~(笑)
あ、ひょっとして。
先生、彼女でもいるのぉ?
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
葵の質問に何も返さない先生に
なぜだか焦りが込み上げてくる。
……先生、彼女いるの…?
美山 葵 (みやま あおい)
え、嘘、いんの!?
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
んなもんいるわけないだろ
その言葉にホッとした。
先生…彼女いないんだ。
良かった…


あれ…。
なんで私こんな先生のこと考えてるの?
先生に彼女がいようがいまいが、
私には関係ないこと。
なのに…
どうしてこんなにも先生のことが気になるの…。
美山 葵 (みやま あおい)
へぇ、意外!
なんでなんで!?
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
…前までは彼女いたんだけどな
その先生の言葉に驚き、
顔を上げた。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
8年くらい付き合ってたんだけど、
上手くいかなかったね
葵 & 輝
えぇ!?8年!なっが!
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
長く付き合い過ぎるのも良くないな。
さっさと結婚するべきだった(笑)
"さっさと結婚するべきだった"
という言葉に胸がチクリと痛んだ。

結婚すべきだったってことは、
その彼女とは結婚を考えていたってこと。

どうして別れてしまったんだろう?
どうして?8年も一緒にいたのに。

先生が可愛い女性と付き合っていたことを想像すると、なぜだか胸が苦しくなった。
美山 葵 (みやま あおい)
恋って…大変だねぇ
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
まぁね…って。
こんな話してる場合じゃない!
お前らは何でここにいるんだ!?
先生は私達を睨み付けるようにして、
尖った声で聞いてきた。
宮本 輝 (みやもと てる)
俺が探し当てたんだよ
"すげーだろ!?"
と得意げに言って見せる輝を横目に先生はため息をついた。
輝は先生の車のナンバーと車体を覚えていたらしく、偶然車が止まっているのを目撃し、
先生の住むマンションはここだと分かったらしい。
輝の観察力と推理力には本当に毎日驚かされる。
椎野 雅紀(しいの まさき) 先生
お前らなぁー…
生徒なんだからこういうことは…
"生徒"という言葉だけが強調されているかのように聞こえる。

"生徒なんだから"

"生徒だからダメ"


先生ってそればっかだよね。
椎野先生だけじゃない。
他の先生だって。
連絡先や住所なんて絶対教えてくれない。
どうしてなんだろう。

この前先生にかしてもらった小説でもあった。


"生徒と教師は生徒と教師だ"と。


つまり、生徒と教師はどこまでいっても
生徒と教師でしかいられないということ。
何で生徒と教師は恋に落ちてはいけないの?
何がいけないの?
私が子供だから、分からないだけ?


私にはよく分からない。
大人の恋なんて知らない。


"好き"って何だろう?

私は葵と輝が好きだ。
椎野先生のことも…。

でも、葵と輝に対しての"好き"と、
椎野先生に対する"好き"は全くの別物。
それだけはハッキリと分かる。


じゃあ、




雪が降ったあの日、
傘をかしてくれたあの男の人は…?

私はちゃんと好きだったはず。

それはちゃんと


"異性としての好き"だったのだろうか…。



でも、葵と輝に対する好きと、
椎野先生に対する好きは、
なんとなく違うような気がした。

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