と思った矢先。
赤ちゃんの泣き声が
分娩室前の廊下に響き渡る。
ずっと立っていたが。
その言葉を聞いて
力が抜けてソファに座る。
色んな感情が入混ざって
自分でも訳わからんくなったけど、
一つだけ確信した感情があった。
"嬉しい"とはまた違って
"悲しい"や"感激"ともまた違う
説明しようのない感情。
何分か廊下で待っていたら
助産師さんに案内されて、
分娩室に入る。
そこに見えたのは、
抱っこした赤ちゃんに優しく笑いかける
俺の嫁さんと
お母さんの腕で
安心した表情の章大。
あなたは分娩室に入ってきた俺に気づいて
こちらを向いて力無く笑う。
出産後で力無くふわっと笑うあなたの笑顔は
今まで見てきたあなたの顔の中で
1番綺麗な顔だった。
頑張った章大とあなたに
掛けてあげたい言葉が沢山ありすぎて
どの言葉を掛けようか迷ってしまい
とりあえず、2人を抱きしめた。
俺よりも小さい体で
頑張って章大を産んでくれたあなたと
小さな体で、頑張って生きて
力を振り絞って産まれてきてくれた章大を
絶対に守ろうと
深く心に誓った日。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。