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第1話

やっと気づいた大切な人。
 僕はぼくではなくなったらしい。秋のカラカラしたような風が通り抜ける下駄箱で蔑むように僕を見つめる彼女が、僕の目の前に広がっている。彼女は冷めたようにこう言うんだ。
「あなたを信じた私が馬鹿だった。あなたは昔のあなたじゃない。さようなら。」
僕と早く離れたいと感じるような歩き方で彼女は去って行った。
僕は愕然とした。こうなることはどこかでわかっていた。どこかで、あの子が僕を突き放してくるって、そうわかっていた。でも、現実になると悲しみ…そして怒りがこみあげてくるものだった。僕にも悪いところはあった。彼女にはあった。なのに彼女は僕だけが悪いかのように言った。それが何より許せなかった。
僕は下駄箱を殴った。血がつっ…と流れた。
すると、誰かが来たみたいだ。ここを去ろう。
『 ねぇ。』
向かってきた人が言う。
「はぁ?」
僕はいらいらした口調で言う。
『 なぁんで怒ってるの?』
と笑うように言ってきた。
僕は咄嗟に振り向いた。
「ねぇー、なんでー?僕馬鹿だからわからないなぁ。」
僕より10cmは身長の高く、淵の長いハットを深くかぶり、まるで素顔を晒さないようにするようにし、黒のダボッとしたマント、その下はスーツのようなものを着た男がいた。
「なんでもねぇよ。…なぁ、お前誰だよ。」
『え?僕?僕はねぇ、セールスマンだよ。』
「なんのだよ、あ、わかった詐欺師か。なんで学校に入ってきてんだよ。」
『詐欺師なんて人聞きが悪いなぁ。僕は君にいい話を持ってきたのに。もったいないなぁ。うん。』
「なんだよ。それ。」
『え?聞きたい?聞きたいよねぇ。』
とニヤニヤと彼は言ってきた。
『ご当選おめでとうございます。この度あなたは我が社のキャンペーンにご応募され、見事当選いたしました。さぁ、あなたの望むものはなんでしょうか?あなたの未来?それとも過去?それとも他人の人生を覗く?さぁ、手を伸ばして、僕と契約を交わしましょう。』
「はぁ?話がうまく掴めないんだけど。まず、僕そんなの応募してないし。」
『あれ?確かにご応募されてますよ?中島理人様ですよね?先程、ほんの5分前に御応募されています。』
「それ違うやつなんじゃね?とりあえず俺ではないよ。」
と言い残し、僕はその場を去ろうとした。
『え〜逃げちゃうんですかぁ?もったいないなぁ。折角今あなたは彼女に嫌われたのに。そんな気持ちをリセットさせてあげたいなぁとか思ったのに。もったいない人だなぁ。』
とムカムカするようなゆったりとしたペースで、僕に聞こえるような声の大きさで言ってきた。
僕は怒りがこみ上げてきた。
そして、僕は男の元に近づき、手を伸ばした。
「なぁ、俺の願い叶えてくれるんだよね?」
『そうですよ、あなたの行きたい未来、過去、僕はすべて見せて差し上げることができます。ですが、それは1回きり。』
男が僕の手を取った。一面に魔法陣のようなものが広がり、光を放った。
『さぁ、あなたのいきたい人生はどこでしょう?』
微笑みながら男が言った。
僕はニヤッと笑って、
「僕の目の前にいる彼の過去へ行きたい。」
『え?僕の過去でいいんですか?』
「面白そうだし、見てみたいなって。」
『ふふっ、やはり見込んだとおりだ。では、向かいましょう。僕のいた…10年後の未来へ…』
僕はその言葉に驚いた。その時には僕は意識がなかったようだ。

『もしもーし?起きてますかー?』
あのイライラするような声がした。あの男の声だろう。
「んんっ。もうついたのか?」
『僕のスピードは宇宙一ですから』
きらっと星がつくように彼は言った。
『さぁ、彼が僕です。25歳の僕。名前は…彩十。この時の僕の職業はロボット制作です。行きましょう。彼が行ってしまう。』
素早く男は彼自身を追いかけ始めた。


[あぁ、また失敗だ。何度やってもうまくいかない。もう50回目だよ?もうそろそろ成功してもいいと思うんだけどなぁ。]
と彩十がいっているのが聞こえる。僕と男…わかりにくいから黒服の男と言っておこう。僕達は彩十に見つからないように影から彼を見つめた。
〔なかなかうまくいかないものよ、頑張って。もうちょっとじゃない。あと…50mmぐらいのやる気を出せば出来るわよ。〕
彩十の隣にいる女が言った。
「彼女は誰?」
『彼女は祐奈。彩十の助手だよ。ちなみに彼らは付き合っていて、来月結婚するんだけどね。』
彼はサラサラと言った。その目を見ると、なにか物寂しそうに見えた。
一方僕は驚いていた。祐奈は僕がさっき下駄箱で散々に言われた夏菜の双子の妹の名前だった。
『驚いてるねぇ。ふふっ、まぁ、そんなもんか。じゃあ、1ヶ月後、覗きに行ってみようか。結婚式。』

彩十と祐奈の結婚式は、とても感動のできるもので、なぜか懐かしく感じた。夫妻からのメッセージとなり、僕は驚きを隠せなくなる。
[僕と祐奈はが初めてあったのは高一の冬。祐奈は病弱で学校にきてらず、僕と幼馴染だった夏菜の妹だってことは知らなかった。僕達が出会った場所は夏菜のお葬式…]
思わず目を見開いた。え?夏菜が死ぬ?だって僕がいたのは中3の秋だから、あと1年後には夏菜が死ぬってことか…?
『…。』
[夏菜は僕と喧嘩のような…僕は夏菜に嫌われていました。僕も夏菜は嫌いだった。だけど、夏菜が助けてくれたから、僕はこの場にいます。]
夏菜が僕を助ける?あの蔑んだ目で僕を見ていたあの夏菜が…僕は思わず黒服の男に聞いた。
「ねぇ、どういうこと?夏菜は死ぬの?」
『死にますよ。彩十をかばって。彩十が雪で滑って間違えて道路に出てしまうんです。でも、彩十はそれに気づかなかった。車が近づいていることに。だからゆっくりと立ち上がろうとした。でも、車は刻一刻と彩十に近づいていた。トラックだったから運転手にも見えていないようで、トラックも雪で滑ってちょっと制御が聞かなかったんだと思う。スピードも出ていた。そのことを夏菜は彩十に伝えようとした。彩十は夏菜にイライラしていたから聞こえないふりをしていた。そこで夏菜は彩十を押し出して、自分が轢かれたんだ。彩十は頭の整理がつかなかった。いつの間にかお葬式になっていたんだよ。』
黒服の男は懐かしむように話した。
[でも、夏菜の言葉を僕が聞こえないふりをしていなければ、夏菜は今この場所にいたかもしれない。僕はずっと後悔していますます。祐奈から、ご両親から夏菜を奪ってしまった…それが今も心から反省していることです。だから、僕はこのことを過去の自分に伝えようと思います。僕と祐奈はあるロボットを今まで作ってきました。それは、あれです。]
と、彩十が指を指した先には彩十そっくりのロボットがいた。
[僕そっくりのロボットです。僕の知識、思い出すべてをコピーした、そんなロボット。このロボットには過去の僕に未来と過去どちらに行きたいか、と聞くようにプログラミングされています。口調は僕そのものです。もし、自分の過去に戻りたいと言ったら、過去の僕は夏菜に謝ることでしょう。また、未来に行きたいと言ったら、夏菜が死ぬことを知るでしょう。そして、このロボットの過去に行きたいと言ったら、僕、つまり今、彼らが僕を覗いているかも知れません。それはかこの僕次第。]
僕はドキッとした。僕の隣にいる黒服の男はあのロボットそっくりだった。僕は察してこう黒服の男に言った。
「彼は僕だよね。そして、君も僕。僕が作り出すロボっト。」
『ふふっ、正解です。すべてはいつかバレると思ってましたし、あなたは私ですから、絶対に気づくと思ってました。』
とにこやかな笑みを浮かべた。ロボットとは思えないような表情だった。僕すごいなぁとか、思ってしまった。
『さぁ、戻りましょう。あなたの時代に。』
彼は手を伸ばした。僕はその手をぎゅっと掴んだ。
未来の僕、彩十いや理人の方を向くと、こっちを見て少し手を振っているように見えた。

眩しい光を避けるために閉じた瞼を開くと、下駄箱に帰って来ていた。時間はあの時のままだった。でも、黒服の男はいなかった。
「あいつ、結局サラリーマンじゃないじゃん。」
僕はふふっと笑って、しゃがみこみ、余韻に浸った。まるで、過ぎ行く季節をあっという間に感じた気がした。
そして、前を向いた。

彼が教えてくれたこと。未来の僕が教えてくれたこと。それは夏菜の大切さ。祐奈と結婚する、という未来はかき消されてしまうかもしれない。
でも、僕は決めた。彼らが導いてくれた1本の光を頼りに進むって。
僕は気づいた時には、歩き始めていた。


「ねぇ、夏菜!あのさ……」



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みなさ
みなさ
趣味多数な女子高1生です。